リーダーシップ

2025.11.16 16:00

現代の企業が必要とする、「役職」ではない真のリーダーシップ

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影響力を基礎に、より強いコミットメントを引き出す仕組み

影響力を基礎として部下を率いるリーダーの在り方は、より長続きするコミットメントを生み出す。ハーバード大学ビジネススクールの名誉教授ジョン・コッターによる組織の変化に関する研究でも、持続可能な組織変革のカギを握るのは、命令ではなく、信頼に基づく連帯感の醸成によることが多いと判明している。部下から見ると、上意下達で押し付けられた方向性よりも、自らも形成に関わった方向性の方が、支持したくなる可能性がはるかに高くなるということだ。

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影響力の構築には時間がかかるが、一度獲得されたなら力を発揮する。リーダーが、決断においては公平性を重んじる態度を示し、約束したことはきちんと守り、たとえ自らが犠牲を払うことになってもチームを支えるようにすれば、影響力はさらに増す。こうした行動は誠実さの現れであり、誠実さこそが信頼感を生み出す源となる。

また、影響力が及ぶ範囲は、地位によって生み出される権威と比べて広い。地位がもたらす権威が及ぶ範囲には限界があるが、影響力はこうした障壁を飛び越える。信用を得ているリーダーは、部署や職能を越えた支援を活用できる。すべての決定権が1人に集中しない、マトリクス化された組織では、これがものを言う。

こうしたタイプの影響力を築き上げるために有効な方法は、ちょっとした機会であっても、一貫した誠実な態度を保つ努力をすることだ。公の場で部下を称賛し、まだ不確実な情報しかない時点でも部下に知らせ、ささいな事柄にも大事な用事と同様の注意を払う、といったことに気を配ろう。こういった小さなシグナルが、時とともに蓄積されていけば、強力な社会関係資本(社会的なつながりがもたらす資産や力)になるはずだ。

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リーダーの力を何倍にもする人的ネットワークの構築

複雑な組織においては、1人のリーダーがすべての情報を把握したり、すべての重要な決断をしたりすることはできない。最も有能なタイプのリーダーは、信頼に基づくネットワークを構築し、必要とされるところに力が振り向けられるようにするものだ。

シカゴ大学ビジネススクールの教授でネットワーク論の第一人者であるロナルド・バートの研究によると、本来であれば無関係なグループを結びつける人は、並外れた影響力を発揮するという。こうした人は、いわば情報の仲介人なのだ。

幅広く多様なネットワークの構築に心を砕くリーダーは、橋渡しの役割を果たす人物になる。彼らは、人より早くチャンスを察知し、問題も迅速に解決できる。なぜなら、他の人が手にできない視点を頼りにできるからだ。

企業の側も、個人の功績だけでなく、メンバー同士の助け合いについても評価し、報いることで、このシフトを後押しできる。「職能上の枠を超えた関係」を構築するリーダーを評価すれば、「影響力を重視する」という企業のメッセージを送ることになる。そしてリーダーに対して、自らの陣地を守るのではなく、影響力の及ぶ範囲を広げるよう促すことにつながる。

最終的な意思決定が行われる前に、次世代リーダーたちを戦略策定に参画させることで、共有された当事者意識が構築される。これは、権威はトップの一握りの人間が独占するものではない、ということを示す取り組みだ。

こうした取り組みはやがて、リーダーシップとは、特定の個人が持つ限られた資質ではなく、集団全体が生み出す力だとみなす企業文化を作り出していくはずだ。

次ページ > 「目に見える印」を越えたリーダーシップの再定義を

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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