2. ロードハウナナフシ:ツリーロブスターの帰還
オーストラリア東海岸沖にあるロードハウ島で生息していた大型の飛べない昆虫であるロードハウナナフシ(学名:Dryococelus australis)は、1918年に座礁した船から逃げたネズミによって絶滅したと考えられてきた。奇妙なことに、それから1世紀近く経って、ロードハウナナフシは、ロードハウ島から23km離れた小さな岩の孤島で命をつないできたことがわかった。
学術誌『Biodiversity & Conservation』に掲載された論文によれば、ロードハウナナフシは、かつてロードハウ島に豊富に生息していたが、1920年代に絶滅が宣言された。1隻の補給船が座礁し、そこから逃げ出したネズミが、島の動物相を大々的に破壊したためだ。
昆虫学者たちは数十年にわたり、彼らの絶滅を悼んできた。ところが2001年、ロードハウ島から23km離れたところにある、玄武岩でできた急峻な海食柱である「ボールズ・ピラミッド」を訪れたロッククライマーたちが、たった一つの茂みに潜む小集団を発見した(海食柱は、海によって岩盤が侵食されて形成された、急峻な斜面を持つ柱のような形状の岩)。
DNA分析により、この昆虫の正体が判明した。ボールズ・ピラミッドに住む「ツリーロブスター」は、まぎれもなくロードハウナナフシだったのだ。
3. タカヘ:飛べない鳥の二度目のフライト
科学者たちが、ニュージーランド固有種の大型の飛べない鳥、タカヘの絶滅を宣言したのは1898年のことだ。タカヘは、オコジョやネコなどの捕食者の導入によって1羽残らず死に絶えたと、彼らは結論づけた。
ところが、2020年に学術誌『New Zealand Journal of Zoology』に掲載された論文が述べたように、この結論は間違いだった。1948年、フィールドレンジャーのジェフリー・オーベルは、ニュージーランド南島の人里離れたマーチソン山脈で、驚愕の発見をなしとげた。彼はこの場所で、群青色の羽と鮮やかな赤いくちばしをもつ、正真正銘のタカヘを数羽目撃したのだ。
同じくクイナ科で、より個体数の多いプケコ(セイケイのニュージーランド個体群)と異なり、タカヘは山岳地帯に生息し、亜高山性草原によく適応している。彼らは「スノータソック」と呼ばれる成長の遅いイネ科植物を主食とし、頑丈なくちばしを使って、葉の根元の栄養豊富な部分をはぎ取って食べる。タカヘは、過酷で孤立した環境で生き抜くすべを身に着けており、そのおかげで数十年にわたり、外来捕食者の脅威と無縁のまま生きつづけてきた。


