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2025.11.15 16:00

「真のAI教師」を作る──評価額約1540億円、語学学習アプリ「Speak」の挑戦

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VCが注目、韓国市場を実験場に製品を徹底的に鍛え上げる戦略

Speakeasy Labsはコースラ・ベンチャーズやアクセル、OpenAI スタートアップ・ファンドといった著名VCの注目を集め、これまでに総額1億6000万ドル(約246億円)を調達している。しかし、2016年の創業当初は資金調達に苦戦した。

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ズウィックによれば、当時は語学学習にもAIにも関心を持つ投資家は多くなく、一部の投資家からは「データを収集して売るための隠れた仕掛けなのではないか」と疑われたことすらあったという。しかし彼が「韓国市場は有望だ」と見抜いた洞察は、結果的に正しかった。

Speakeasy Labsが7800万ドル(約120億円)を調達した2024年12月のシリーズCラウンドを主導し、台北市で開かれた同社のユーザー会議にも出席したアクセルのパートナー、ベン・クワッツォは、「Speakeasy Labsが韓国市場に重点を置いたのは意図的な戦略だった」と語る。同社は、世界で最も競争が激しい語学学習市場の1つである韓国を「サンドボックス(実験場)」にし、製品を徹底的に鍛え上げる狙いがあったのだという。

「Speakeasy Labsが目指しているのは、ドーパミンを刺激するアプリでも、ユーザーの関心を釣る仕掛けでもない。私たちが提供しているのは、最終的な成果へと導く“学習の旅”だ」とクワッツォは言う。

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ティール・フェローシップを通じ知り合った共同創業者たち

ズウィックが共同創業者のアンドリュー・スーと出会ったのは、2012年のティール・フェローシップを通じてだった。ズウィックは当時、ハーバード大学を中退し、自らが「ディープラーニング研究休暇」と呼ぶ期間に入っていた。その頃、彼は最初のスタートアップとなる学習ツール兼モバイルアプリ「Flashcards+」を開発しており、のちに同アプリは教育テック企業Cheggに買収された。スーもまた似た経歴を持つ人物で、2011年にスタンフォード大学の博士課程を中退し、ティール・フェローシップに参加していた。

AIに魅せられた2人は、カリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学の講義に“潜り込み”、強化学習をはじめとする機械学習の基礎技術への理解を深めていった。OpenAIの共同創業者ジョン・シュルマンが行う講義にも、見つからないようにこっそり参加していたという。

OpenAIの技術が成長の核、Speakに不可欠な存在

そして、今やOpenAIはSpeakの成長に不可欠な存在となっている。AIモデルが進化するにつれSpeakのアプリも進化し、利用者の学習状況に応じてレッスンプランを自動更新したり、創業当時には不可能だったアクセントの修正といった機能も実現できるようになった。

初期の投資家であるコースラ・ベンチャーズのパートナー兼マネジングディレクター、スヴェン・シュトローバンドは、2017年初頭のSpeakを覚えている。当時のアプリはAIと本格的な会話を交わせるほどではなかったが、外国語の話者のアクセントを正確に認識する力はすでに備えていたという。「彼らは“AIファースト”という言葉が流行する前から、本気でAIファーストだった」とシュトローバンドは語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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