社会は今、ただ「長生きして働き続ける」ことを前提にする時代から、「健康に、そして幸せに長く生きるために働き方そのものを見直す」時代へと移りつつある。
人口の高齢化が進むなか、世代を超えて持続的に活躍できる人材は、企業と社会の双方にとって戦略的価値を担う存在となっている。急速に変化する社会環境の中で、企業は人材の学び直しを単なるスキル補填ではなく、組織の根幹に関わる戦略として再設計する段階に来ている。
こうした時代の要請に応える形で、企業におけるリスキリング実践を牽引してきたのが後藤宗明氏だ。以下は、著書『リスキリング「人材戦略編」』も上梓した氏による寄稿である。
2025年11月は「Movember(男性の健康啓発月間)」と「International Men's Day(11月19日)」を軸に、グローバルでは“男性の心身の健康”に光を当てるさまざまなキャンペーンが行われます。日本でも中高年男性の健康、社会参加、孤立リスクなどの課題が注目されています。
リスキリングの国内外事例を求めて世界を飛び回っている私は、欧米で加熱する「ロンジェビティ・ビジネス」の現場を訪れ、自らの生活習慣と健康管理を根本から見直しました。
本稿では、世界のロンジェビティムーブメントの熱狂ぶりと、私自身が体験した“40代からの体質改善”の実体験を交えて、これからのビジネスパーソンに不可欠な「ロンジェビティ・スキル」について提案します。
ロンジェビティとは何か?
ロンジェビティ(longevity)は直訳すると「長寿」。しかし今、欧米でこの言葉は、単なる寿命の長さではなく「健康で、社会とつながりながら、幸福に長く生きる」ことを意味するキーワードになっています。
なぜ「ロンジェビティ(長寿)」が注目されているのか?
近年、AIやバイオテクノロジーの進化により、老化防止・再生医療・遺伝子編集などの技術革新が進み、「長く・健康に生きる」ことが現実味を帯びてきました。加えて、
といった社会背景も、関心を後押ししています。
高齢化社会において「どれだけ長く生きるか」ではなく、「どう生きるか」「どう働き続けるか」という視点が世界的に重要視されるようになりました。欧米では「Longevity Economy(長寿経済)」という言葉が広まり、医療だけでなく、教育、雇用、金融、社会インフラ全体を見直す動きが本格化しています。
ビジネス面でも「ロンジェビティ・テック」分野への投資が急増し、医療・美容・食事・運動など多様な産業に波及。今やロンジェビティは経済、社会、働き方、暮らし全体を変える大潮流になりつつあります。
私が代表を務める一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブでは、「キャリアの寿命を延ばす」ことを目的にリスキリング支援を行っていますが、ロンジェビティとは、“キャリア寿命と健康寿命の両輪をどう維持するか”という人生設計の課題そのものでもあります。



