将来のAIデータセンターワークロードに必要なパフォーマンスを提供するSSDには、液冷技術が必要になる可能性が高い。Solidigmは2025年OCP Summitにおいて、液冷式SSDのプロトタイプを展示し、その技術について説明した。
シリコンバレーで開催された2025年OCP Summitでは、ハイパースケールデータセンター市場の顧客とサプライチェーンが一堂に会した。総参加者数は1万1000人を超え、1万2000人に迫る規模となり、2024年の約7500人から大幅に増加した。この成長の多くは、AI応用に向けたデータセンター投資と、業界の成長を可能にするオープンリファレンスデザインや標準の重要性によるものだ。
AIワークロードはデータセンターの電力需要を増加させると同時に、データセンターを冷却する方法も求められている。OCP Summitのようなイベントでは数年前からさまざまな液冷技術が展示されてきたが、今年はAIワークロード対応のデータセンターで確実に採用されるように見受けられた。ショーの基調講演の中で、グーグルはデータセンター向けのDeschutes冷却液分配ユニット(CDU)リファレンスデザインについて説明した(下図参照)。
OCP Summitの展示エリアでは、液冷分配システムのこのリファレンスデザインに基づいた製品を展示する企業が複数あった。実際の熱抽出は、冷却液をコンピューティングユニットやその他の熱抽出が必要なユニットに隣接する冷却プレートを通して循環させることで行われる。
GPUやその他のコンピュータロジックの電力要件の増加が液冷の大きな推進力となっているが、他のコンポーネントも同様に発熱量が増加しており、液冷が必要になっている。これまで液冷の対象ではなかった分野の一つがデジタルストレージだが、SSD(ソリッドステートドライブ)メーカーのSolidigmは、液冷式SSDとその特殊な冷却プレート設計について講演し、展示を行った。
同社は、PCIe第5世代のSSDは一般的に最大25Wの電力しか必要としないが、2026年に予想されるPCIe 6.0への移行、そして最終的に2028年に予想されるPCIe 7.0では、SSDの電力要件が40Wさらには60Wにまで上昇する可能性があると指摘した(下図参照)。これらの新しいPCIe世代は、進化するGPUの要件を満たすためにストレージのデータレートを向上させる必要がある。
これらの高いSSD電力要件は、SSD内部でより多くの熱を発生させる。Solidigmによると、内部温度が約77℃未満であればSSDは仕様通りのデータレートで動作するという。しかし、約77℃では性能が仕様性能の58%に低下し、79℃では仕様性能の1%にまで低下する。これはサーマルスロットリングと呼ばれ、これらの高い電力レベルではSSDは冷却を必要とし、従来の空冷では対応できない可能性が高い。
Solidigmは、下図に示す特殊な冷却プレート設計を作成することでSSDの冷却に対応した。この設計はSSDの両面を冷却し、故障時にSSDを取り外してホットスワップできるようにバネ式の機構で取り付けられている。この設計は以下の画像のとおりだ。
この設計はSolidigmのOCP Summitブースで展示され、冷却液が流れ込んでいる様子が見られた。その写真を以下に示す。AIハイパースケールデータセンターのすべての要素に液冷が必要になる可能性がある。
SSDの冷却を容易にするため、同社はSSDの新しい仕様をいくつか提案した。特に、冷却プレートと接触するSSDの表面には平坦さと粗さの許容範囲が必要であり、冷却プレートの接触面を定義し、鋭いエッジは面取りする必要があるとしている。
SSDフォームファクターの開発に関する別の講演「EDSFF New and Upcoming Updates」では、SSDの液冷についても言及があった。そのセッションでは、2025年8月のFMS(Flash Memory Summit)後のOCPストレージグループによる将来のSSDの要件に関する議論に焦点が当てられた。E1、E2、E3の仕様と液冷に重点が置かれ、Solidigmの予測よりも高い最大79.2Wの電力を持つSSDを冷却する必要性について議論された。
Solidigmの取り組みが液冷SSDの計画を反映しているかどうか尋ねたところ、それはプロトタイプと見なされているようだ。これは恐らく妥当な見方だろう。これらの他のSSDに関する議論については、別のブログで詳しく書く予定だ。
Solidigmは、PCIe 6.0以降の世代に基づくデータセンターSSDに必要となる可能性がある液冷式SSDのプロトタイプを展示した。



