ヘルスケア

2025.11.12 17:00

妊娠中に新型コロナに感染すると胎児の発達障害の発症率が上昇 米研究

Getty Images

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妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、胎児が自閉症スペクトラム障害(ASD)をはじめとする発達障害を発症する確率がわずかに高くなることが、新たな研究で示された。リスクの増加は妊娠後期に母体が感染した場合に最も著しく、男児で特に多く見られた。ただし、研究者らは全体的なリスクは低いと強調している。

この研究に関する論文は、米医学誌「産科と婦人科」に掲載された。研究では、2020年3月1日~21年5月31日に生まれた1万8124人の子どもの健康状態を評価した。約5%に当たる861人の乳児は、妊娠中に新型コロナウイルスに感染した母親から生まれた。これらの子どもの16.3%が生後36カ月までに神経発達障害の診断を受けていたのに対し、母親が妊娠中に同ウイルスに感染しなかった乳児では、この割合は約10%にとどまった。母親が同ウイルスに感染した乳児の9.5%、感染しなかった乳児の4.7%に、特定不能の言語障害が報告された。ASDは、母親が感染した乳児の2.7%、感染しなかった乳児の1.1%に報告された。

特に妊娠後期に新型コロナウイルスに感染した女性で、リスクが有意に異なっていた。一方、妊娠初期または中期に感染した女性の間では、リスクに有意な差は認められなかった。また、子宮内で同ウイルスに暴露した男児で、リスクが著しく増加することが観察された。子宮内で暴露した女児でも高いリスクが認められたが、その差は統計的に有意ではなかった。

今回の研究は、生後12カ月の乳児について分析した先行研究の結果を裏付けるものとなった。他方で、両研究の結果は最近の他の報告とは異なっている。例えばある研究では、母親の新型コロナウイルス感染が、生後6カ月の乳児の神経発達上の差異とは関連していないとされた。23年に発表された研究では、妊娠中に新型コロナウイルスに暴露した乳児と暴露していない乳児を比較した場合、発達遅延率が高いという証拠は認められなかったと結論付けられた。明らかに、この話題はより深く掘り下げる必要がある。

複数の研究から、子宮内での新型コロナウイルスへの暴露が胎児の健康に悪影響を及ぼす可能性があることが示されている。例えば、妊娠中の女性が新型コロナウイルスに感染すると、新生児の呼吸困難リスクが高まる。母親の新型コロナウイルス感染は早産とも関連している。

ワクチンはこれらの確率を低減する。研究では、ワクチン接種を受けた女性から生まれた乳児で、新型コロナウイルス関連の呼吸困難が発生する確率が大幅に低下することが示された。同様に、妊婦へのワクチン接種は早産率を低下させることが分かっている。

新型コロナウイルスワクチンの安全性と有効性を裏付ける膨大なデータや妊婦のワクチン接種が、乳児に保護効果をもたらすことを示すデータがあるにもかかわらず、米国のロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官は最近、同ワクチンは健康な妊婦には推奨されなくなったと発表した。この発表は、米母体胎児医学会や米産科婦人科学会を含む多くの医療団体から強い批判を浴びた。

今回の研究は、妊娠中の新型コロナウイルス感染がASDをはじめとする発達障害と関連している可能性を示している。これは、母親の同ウイルス感染が、胎児の健康に悪影響を及ぼす可能性を示唆する証拠の1つと言えよう。インフルエンザを含む他のウイルスによる母体の感染も、胎児への有害な影響と関連している。これらの影響は、感染に伴う発熱または母体の免疫反応の何らかの側面から生じている可能性がある。いずれにせよ、感染を防ぐことがリスクを最小限に抑える最も簡単な方法だ。ワクチン接種は依然として、感染症を防ぐ最も効果的な手段だ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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