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2025.11.12 12:00

バブルはAIだけじゃない、危険信号が灯る「8つの数字」

Shutterstock.com

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AIによって牽引された株式相場から、過去最高値に迫る金価格まで、あらゆる資産クラスがいずれ下落する可能性を示す兆候が積み上がっている。

資産バブルには特有の「匂い」がある。株価が企業の利益を大きく上回り、ジャンク債(低格付け債)がまるで金のように扱われる。上昇相場の最中は気分が良いが、やがて懐疑の声が高まる。問題は、鳴っている警報が単に「電池切れ」を示すものなのか、それとも「火災」を示すものなのか、ということだ。

米国記事執筆現在、S&P500種株価指数は約6700ポイントとなっており、これは5年前の数字のほぼ2倍だ。原動力は「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる巨大テック企業である。これら7社が指数全体の約40%を占め、AIが世界を作り変えるとの前提で数兆ドル規模の投資を進めている。

泡立っているのは株式だけではない。金もコーヒーも過去最高水準に近い。究極のリスク資産とされるビットコインは、2024年1月にビットコインETF(上場投資信託)の取引が開始されて以降、130%以上上昇している。住宅市場でも入札競争が起き、価格は購入希望者の手が届かない水準まで押し上げられている。ジャンク債ですら、まるで何も悪いことが起きないかのように取引されている。

経済学者のジョン・ケネス・ガルブレイスは、バブルの形成過程は常に同じだと述べている。新しいアイデアが人々を魅了し、信用が膨張し、価格が上がる。誰もが自分が賢くなったと錯覚する。そして突然、現実が牙をむき、すべてが崩壊する。ガルブレイスによれば、本当の燃料は信用ではなく、「果てしない希望」と「短い記憶」である。どの世代も、「今回は違う」と自分たちを納得させるのだ。

もちろん、バブルの頂点では警鐘は鳴らない。そして、信頼された指標ですら誤警報を発することがある。

米国債のイールド・カーブは2022年6月から2024年8月まで逆転していた。通常、逆イールドは24カ月以内の景気後退を示唆する。理屈の上では、すでに減速が始まっているはずだ。

しかしそのシグナルを信じて株を売った投資家は、過去半世紀で2番目に強い上昇相場の出だしを逃した。その原因もAIにあるといえる。ドイツ銀行によると、AIインフラ投資がなければ、米国経済はすでに景気後退に入っていた可能性があるという。

それが、この市場に違和感を与えている理由のひとつだ。

おそらくそのために、株式が上昇しているにもかかわらず、金が過去最高水準にある。通常、両者が同時に上昇することはまれだ。株式は楽観を、金は恐怖を反映する。これは単に市場がリスクヘッジをしているだけかもしれない。だが、もしかすると一部の投資家たちは、他の人々よりも早く「焦げ臭さ」を嗅ぎ取っているのかもしれない。

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翻訳=江津拓哉

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