経営・戦略

2025.11.12 11:30

退任控えたバフェットの「最後の手紙」、生前贈与を加速させる意向

Alex Wong/Getty Images

Alex Wong/Getty Images

著名投資家のウォーレン・バフェットは米国時間11月10日、感謝祭に合わせて公開した書簡の中で、自身の資産を子どもたちの財団に分配するペースを加速させると発表した。これは、バフェットが5月、年内でバークシャー・ハサウェイのCEOを退任すると表明して以来、同社の経営権や遺産の継承に関するニュースとしては最新のものとなる。

バフェットは声明で、「子どもたちの3つの財団への生前贈与のペースを上げる必要がある」と述べた。その理由として、子どもたちの代でほぼすべての遺産を処分できる確率を高めるためだと説明した。

バフェットは、約13億5000万ドル(約2079億円)相当のクラスB株式をこれらの財団に拠出する予定である。

また彼は、バークシャーの株主が後継者であるグレッグ・アベル(バークシャー・ハサウェイ・エナジーCEO)に十分な信頼を寄せられる時が来るまで、「A株の相当量」を保有し続けるとの考えを述べ、「すでに私の子どもたち全員がグレッグを100%支持しており、それはバークシャーの取締役たちも同様だ」と付け加えた。

バフェットは書簡の中で、「これからは静かに過ごすつもりだ」と述べ、「今後はバークシャーの年次報告書を書くことも、年次総会で延々と話すこともない」としながらも、今後も毎年、感謝祭に合わせた手紙は執筆する意向を示した。

バフェットは声明で、「3人の子どもたちは今や、大きな資産を適切に分配するに足る成熟度、知性、エネルギー、直感力を十分に備えている」と述べたうえで、「彼らは急速に変化する世界に適応する必要があるだろう。死後の世界から現世に影響を与えるという考え方には成功例が少なく、私にはそのような欲求はまったくない」と語った。

バフェットによると、3人の子ども(72歳、70歳、67歳)それぞれには、早すぎる死などに備えて3人の代替受託者が設定されているという。「これらの受託者たちは極めて優れた人間であり、世の中の理をよく理解していて、利害の衝突もない」と彼は述べた。

バフェットは今年開催されたバークシャー・ハサウェイの年次総会で、年内にCEOを退任し、アベルがその後任を務めると発表した。総会では、ドナルド・トランプ大統領の関税政策を批判し、「貿易を武器にすべきではない」とし、米国は「世界との貿易を目指すべきだ」と述べた。また、米国が経済大国としての地位を維持できるかという懸念について、株主に対し「落胆する必要はない」と述べ、トランプが大規模な関税を発表した後に生じた市場の変動についても、「米国経済の歴史における、より大きな危機と比べれば、取るに足らないものだ」と語った。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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