経営・戦略

2025.11.12 08:00

ソフトバンクが9000億円で「エヌビディア全株売却」、OpenAIへの投資資金を確保

Getty Images

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ソフトバンクが保有していたエヌビディア株をすべて売却したとの発表を受け、米国時間11月11日の取引でエヌビディア株は下落した。これはソフトバンクがOpenAIへの投資資金を確保するための売却であり、同社がエヌビディアから資金を引き揚げる最新の動きとなった。

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11日朝の取引で、エヌビディア株は約2%安となり、約194.60ドルの値をつけた。前日に5.7%高だったのとは対照的だ。

ソフトバンクは決算報告で、10月に保有していた3210万株のエヌビディア株をすべて売却し、総額58億3000万ドル(約8978億円。1ドル=154円換算)を得たことを明らかにした。また、別途でTモバイル株4020万株を売却したことも開示している。

ソフトバンクの後藤芳光CFOは、エヌビディア株の売却について問われた際、「OpenAIへの投資は非常に大きい」と述べ、300億ドル(約4.62兆円)を超える投資を行う予定であり、そのためには既存のポートフォリオを売却して資金を調達する必要があると説明した。

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かつて、ソフトバンクは2017年に約40億ドル(約6160億円)をかけてエヌビディア株を取得した後、2019年に売却を発表した。当時の投資リターンは33億ドル(約5082億円)だった。ソフトバンクの創業者でありCEOの孫正義は2024年、エヌビディアへの投資から撤退したことを後悔していると語り、「逃した魚は大きかった」と述べた。もし保有を続けていれば、ソフトバンクは1500億ドル(約23.1兆円)超の追加利益を得ていたと見られている。2016年に半導体設計企業のアーム・ホールディングスを買収した孫はその後、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOの自宅でソフトバンクによるエヌビディア買収を提案したが、交渉はまとまらなかったと明かした。

ソフトバンクは2019年に保有株を売却した後も、徐々にエヌビディア株を再取得し、2025年初めには保有株数が3000万株を超えたと報告していた。ソフトバンクは近年、AI分野で複数の投資を行っており、OpenAIへの出資もその一環である。OpenAIはスターゲート・プロジェクトの一環として、米国内に5カ所の新たなデータセンターを設立すると発表した。また、ソフトバンクはTSMCやオラクルの株式も取得している。さらに、10月にはABBのロボティクス部門を54億ドル(約8316億円)で買収することも発表した。これはAIとロボット技術の融合を狙った動きとみられている。

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翻訳=江津拓哉

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