経済

2025.11.13 11:00

サードプレイス神話崩壊か? スターバックス配達事業30%成長が示す、カフェ業界の地殻変動

Shutterstock.com

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先週、スターバックスはコーヒー配達事業が10億ドル(約1540億円)規模のビジネスになったと発表した。そう、10億ドルだ。「B」のつく10億ドルである。

さらに注目すべきは、スターバックスが直近四半期に、この配達事業が驚異的な30%成長したと発表したことだ。

「なるほど、興味深いけど、それがどうした?」と思う人もいるかもしれない。しかし、この統計の意味するところは、単にコーヒーを売ることをはるかに超えている。

体験という神話

長年、小売業の専門家たちは、小売業はすべて体験だと主張してきた。第三の場所。コミュニティの集いの場。インスタ映えするような瞬間。そして、「第三の場所」の代表格として称えられてきた企業はスターバックス以外にない。実際、「第三の場所」という言葉が存在する大きな理由の一つが、スターバックスなのだ。

ハワード・シュルツは、スターバックスはただコーヒーを売るだけの場所ではないという考えの上に帝国を築いた。それは体験を売る場所であり、家と職場の間にある、自分が所属していると感じられる場所だった。そして長い間、この考えは見事に機能していた。

しかし、何らかの理由で—モバイルオーダー、パンデミック、人口動態の変化など、誰にもわからないが—何かが変わった。なぜなら今や、配達を通じて10億ドルものコーヒー注文があるという事実が示すように、明らかにスターバックスの顧客の大部分は、そのコーヒーハウス体験をまったく気にしていない可能性があるからだ。

10億ドルを理解するために、スターバックスの2025年度の世界全体の年間売上高は約370億ドル(約5兆7090億円)だったことを考えると、配達事業は特に米国において無視できない規模だ。さらに、スターバックスの米国既存店売上高成長率が前四半期に横ばいだったことを考えると、配達の30%成長は、人々がブランドとどのように関わりたいかという根本的な変化を表している。

10億ドルの警鐘

こうした状況を踏まえると、10億ドルの配達事業の発表は、ブライアン・ニコル最高経営責任者(CEO)の立て直し戦略に対する警鐘となるはずだ。

これまでニコルは、スターバックスの第三の場所の雰囲気を活性化する計画と取り組みについて前面に立って発信してきた。ニコル氏はコンディメントバー(調味料コーナー)を復活させ、コーヒーの注文を4分以内に用意するという目標を設定し、新しい制服基準を要求し、さらにセラミックマグをスターバックスの運営に導入した。スターバックスはニコル氏の在任中に新しい「未来のコーヒーハウス」を予告し、今年7月には米国内の残りのモバイルオーダー・ピックアップ専門店をすべて閉鎖する計画も発表した。

しかし、すでに全取引の30%がスターバックスのモバイルアプリを通じて行われており、さらに10億ドル程度が配達によるものであることを考えると、第三の場所の体験を再活性化するだけではスターバックスの立て直しには十分ではないと考えるのが妥当だ。なぜなら、日を追うごとに、より多くの人々がただコーヒーを受け取って立ち去ることを好むようになっているからだ。

言い換えれば、スターバックスの過去のノスタルジックなビジネスモデルは遠い過去のものとなり、近い将来に戻ってくる可能性は低い。

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