職場のトイレが汚いと気分が落ち込む。トイレを使うのはほんのわずかな時間だから、息を止めてさっと出てくれば済むかと思ったら、なかなかどうして、トイレ環境は職場全体、ひいては従業員の生活全体の満足度に大きな影響を与えることがわかった。
横浜市立大学データサイエンス学部の上田雅夫教授らによる研究グループは、LIXILと共同で、職場に勤務している20歳以上の男女1957人を対象に「ウェルビーイングと職場のトイレ環境の関係」に関する調査を行った。

それによると、アンケートで得られたデータをもとに、清潔さ、空間のゆとり、明るさ、室温、嫌な臭いがしないなど10の要素がトイレ(職場)の満足度に与える影響(変量効果)を統計学的に計算し、そこから男女別に仕事の満足度への影響、さらにそこから生活全体の満足度への影響を割り出した。すると、トイレの満足度が仕事の満足度に有意に寄与し、仕事の満足度が生活全体の満足度に有意に寄与していることが判明した。

トイレの満足度の男女別トップ6では、男性の1位は嫌な臭いがしない、女性の1位は清潔さだった。さらに空間のゆとりが男女共通でランクインしている。そのほか、明るさ、洗面台の広さ、鏡の大きさ(男性)、手荷物を置く場所、上着をかける場所、室温(女性)があげられた。

この結果を受けて研究グループは、職場のトイレは単なる設備ではなく、働く人のメンタルヘルスとエンゲージメントに影響し、最終的に個人の幸福感にまで波及するという「重要性をデータで示唆」することができたと総括している。
上田教授は、職場のトイレという改善可能なものが、仕事と生活の満足感を高めることがわかり、人々の幸せの向上に対する「ひとつの対応方法」を示すことができたと話す。また、横浜市立大学先端医科学研究センターの西井正造助教は、トイレは心と体を整える「小さな居場所」であり、人はそうした安心できる場所に身を置くことで、前向きになり仕事や日常が充実すると指摘している。
きれいなトイレが幸せを呼ぶと、占いなどではよく言われるが、迷信ではなかったわけだ。おトイレ、大切ですね。



