リーダーシップ

2025.11.14 15:00

厳密な計画は変化への適応を損なう──リーダーはバランスをどう獲得するか

Shutterstock.com

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計画は、今後の成り行きを明確にしようとして立てられる。計画があれば、方向性がはっきりし、リソースを調整し、不確実性を減らせる。

だが、多くの企業における戦略とは、こうした目的とはまったく異なるもの──いわば「拘束具」のようなものに成り果てている。問題を解決するために立てられたはずの計画が、逆に重い足かせになってしまうのだ。こうなると、その時々の状況に合わせた適応を促すどころか、むしろ変化を抑制してしまう。

こうした事態が起きるのは往々にして、計画に何もかも詰め込んでしまう場合だ。リーダーは、リスクを減らしたいとの思いから、今後起きる出来事をすべて書き記した詳細なロードマップを作成する。しかしこうした計画は、前提条件が変わった時に、変更を反映してアップデートすることの障壁となる(しかも、条件の変化は、どんな案件にもつきものだ)。威信をかけて、多くの労力を費やして作成しただけに、計画に異を唱えることがためらわれてしまうのだ。

詳細な計画は「徹底した検討」とは異なる

詳細な計画の立案は、「徹底した検討」と混同されがちだ。しかしこの2つは同じものではない。詳細な計画は、すべての物事がうまく運ぶと決めてかかっている。一方、徹底した検討は、すべてがうまくいかないことを織り込んでいる。

危険なのは、いったん計画が出来上がってしまうと、たとえそれが間違っていることを示す証拠が現れ始めても、組織が計画を堅持しがちだということだ。これは、高名な心理学者のアーヴィング・ジャニスが「集団思考」と呼ぶ状況を作り出す。つまり、合意したことを守るべきという心理的圧力が、現実を直視し立ち向かおうとする動きを上回ってしまう状況だ。

「集団思考」を防止するため、計画は仮説だと捉える

こうした状況に陥ることを防止する方法の1つが、「計画すること」への姿勢自体を変える、というものだ。計画は、確約ではなく、仮説だと捉えてみよう。「現時点でベストな選択肢」と位置づければ、当面の指針であり、新たな情報が登場するたびに進化するものとして、計画を捉え直せる。そうすれば、チームの目標は、最初に立てた計画に固執することではなく、その時々で柔軟に対応しながら方向性を守ることだと理解してもらえるはずだ。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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