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2025.11.12 16:30

女性がトップに立てない本当の理由──鍵は男性より「経験を求める心理」、新研究が示す意外な事実

Shutterstock.com

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ビジネス界や政界の上層部に占める女性の割合は、頑固なまでに依然として低い。その理由が新たな調査で把握できるかもしれない。

S&P500種指数を構成する企業のうち、最高経営責任者(CEO)が女性なのは10社に1社にも満たず、米議会上院の全議員のうち女性が占める割合はわずか26%だ。米国16州で女性が上院議員に選出されたことがなく、18州で女性知事が誕生したことがない。そして女性の大統領はこれまでにいない。新しい一連の研究は、トップにおけるこの男女格差の説明の1つとして、女性が高い指導的地位に名乗りを上げる前に多くの経験を積むのを待っていることを示唆している。

専門誌『Psychological Science(サイコロジカル・サイエンス)』に掲載されたこの新しい研究は、女性が男性ほどにトップに立候補しないのはどのような状況のときなのか明らかにしようと約1世紀にわたる米国の政治データを分析している。特に、下院議員、副知事、州司法長官、州務長官を担った6400人以上の政治家の政治キャリアを研究した。これらの役職は通常、州知事や上院議員への登竜門だが、研究者たちは、これらの役職に数年しか就いていない男性の方が女性よりも上位の役職に立候補する可能性が高いことを発見した。

女性が経験を積むにつれて野心の差は解消

しかし女性の経験が増えるにつれて男女差は縮まり、やがてその差は完全になくなった。女性たちが8〜9年の任期を終えたとき、知事選や上院選に立候補する確率は男性たちと同じになった。研究者らは、女性たちがただ子育てが終わるまで待っていたという可能性を排除し、時間の経過に伴う世間の意識の変化も結果に影響を与えなかった。女性たちは次の仕事をする前にもっと経験を積みたかっただけなのだ。

研究者らは、なぜ女性がより高い役職を求めるのに時間がかかるのかを明らかにするために2つ目の研究を行った。フルタイムで働く400人以上の参加者に、部門を率いる役職を新設するコンサルティング会社で働いているという状況を想像してもらった。参加者は自分の職歴を提示され、すでに3年か12年勤務していると告げられた。

3年しか経験がない場合、その部門トップの役職に応募すると答えた女性は男性よりも少なかった。しかし12年の経験があるという想定では、男女の差はなくなり、その役職に応募すると回答した女性の割合は男性と同じになった。応募する、しないの判断の理由を参加者に尋ねたところ、女性がキャリアが浅い段階で応募しなかったのは、成功する自信がなかったからだということが明らかになった。

経験不足では男性も自信が減退するが、チャレンジを躊躇させるほどではないことがわかった。研究論文の著者で米コロンビア大学ビジネススクールの経営学教授であるメイベル・エイブラハムは「男性は自分が十分な準備ができていないことを認識しながらも、とにかくチャンスを追い求めることが多い」と説明する。

女性は準備が整っていようがいまいが、とにかくその仕事を目指すべきだと言いたくなるが、それは最善の解決策ではないだろうとエイブラハムは言う。「本当に準備ができていないのに、その役割を追い求めるのは誰にとっても理想的ではない。私たちの調査結果は、男性が自信がないにもかかわらず前進することがあることを示唆している。そうしたことから、組織は無理な行動を奨励するのではなく、誰もが準備が整っているという明確かつ正確な感覚を身につけられるよう支援することに重点を置くべきだ」とエイブラハムはメールで説明した。

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翻訳=溝口慈子

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