アレクサンダー・C・R・ハモンドの著書『ヒーローズ・オブ・プログレス(Heroes of Progress)』には、世界を変えた65人の偉人が紹介されている。心理学者スティーブン・ピンカーが同書に寄せた序文いわく「経済・科学・文化のいかなる進歩も、人間の脳が生み出す革新力と、それを受け入れ、育む土壌にかかっています」
ハモンドは書籍内で紹介した「ヒーロー」の定義を、「多くの人の命を救った、あるいは生活を大きく改善させた人物」としている。それはたとえば「ワクチン開発で数百万人の命を救った科学者、新たな作物で数十億人を飢餓から救った農学者、豊かで健全・公正な社会をもたらした思想家」などを指す。
私はこの本を読むなかで、「ヒーロー」たちがいかにして画期的な発見や成果を成し遂げたのか、また彼らの幼少期、教育、興味、才能について多くのことを学んだ。本稿では、そうした偉人達が子どもの頃に見せた非凡な才能を紹介している。
さまざまな才能に恵まれた偉人たちだが、多くはすでに幼少期からその兆候を表していた。これはSMPY(数学の才能を早期に示した児童の研究、The Study of Mathematically Precocious Youth の略語)の結果とも一致する。こうした才能豊かな子どもの多くは学校を飛び級で修了し、幼い頃から特定の分野に強い関心を示していた。また、発明家のなかには、優れた空間認識能力を感じさせるエピソードもあった。
偉人たちが幼少期に見せた「只者じゃない才能」一覧
電池を発明したアレッサンドロ・ボルタは16歳で学校を中退したが、18歳ですでに当時の著名な物理学者らと書簡を交わしており、その後まもなくみずからも実験を始めた。
功利主義の哲学者であり、また、さまざまな社会改革を推進したジェレミー・ベンサムは神童だった。3歳でラテン語を学び、12歳でオックスフォード大学に入学。法律を専攻して15歳で学士号、16歳で修士号を取得した。
世界最初のコンピュータープログラマー、エイダ・ラブレスも早くから才能を示している。14歳のときに病気で1年間寝たきりになったが、その間に機械への強い関心が芽生え、幼少期からしばしば設計図を描いた。10代ですでに著名な数学者たちとの交流を開始している。数学者のチャールズ・バベッジはそんなラブレスを「数字の魔術師」と称した。
古典的自由主義の提唱者ジョン・スチュアート・ミルは、3歳で古代ギリシャ語の学習を始め、8歳でラテン語を学んだ。12歳までに古典文学の大半を読破し、実験科学の書物は「娯楽」として読んでいた。
コレラの感染源を特定した「疫学の父」、ジョン・スノウは貧しい家庭に育ったが、並外れた聡明さと数学的才能に恵まれていた。母親はスノウの学問的才能に気づき、相続したわずかな財産で彼を近隣の私立学校に通わせた。



