欧州

2025.11.11 08:00

ロシア政権の重鎮ラブロフ外相、失脚間近か 重要会議欠席で憶測広がる

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相。2025年7月31日撮影(Contributor/Getty Images)

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相。2025年7月31日撮影(Contributor/Getty Images)

これは新たな「クレムリン学」と呼べるかもしれない。東西冷戦時代、米首都ワシントンの政治界隈では、ソビエト共産党の権力中枢クレムリンで誰が政治的に支持され、誰が失脚したのかを追跡する専門職があった。米国の情報分析官やソビエト研究者らは一様に、共産党会議や公式集会の写真に目を凝らし、誰が誰の隣に座っているか、誰の不在が目立っているか、そしてその席次などから、ソビエト連邦の変わりやすい権力政治の中で次に何が起こるのかを予測しようと試みた。

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ソ連が崩壊すると、クレムリン学は廃れていった。米国でクレムリンの陰謀の内情に真剣に取り組む専門家が減ったためだ。しかし今、その慣行が復活しつつある。2022年にロシアがウクライナに侵攻して以来、欧米の政策立案者らはウラジーミル・プーチン露大統領による任命や解任、異動、降格を細部まで精査し、ロシアの無謀な軍事的実験がどこへ向かうのかを把握しようと努めている。

こうした憶測の最新の対象は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相だ。長年プーチン大統領の手先として同大統領の帝国主義を推進してきた政権の重鎮であるラブロフ外相はここ数日間、数々の重要な行事から姿を消している。通常は常連である外相が、5日に開催されたロシア国家安全保障会議にも出席しなかった。表向きは(恐らくプーチン大統領との)「同意の上で」欠席したとされた。ラブロフ外相は今月下旬に南アフリカで開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に向けたロシア代表団からも外され、代わりに外相よりはるかに下位のマクシム・オレシキン大統領府副長官が団長に指名された。

ロシア当局者の話を聞く限りでは、状況は相変わらず平常通りだという。あらゆる憶測が飛び交う中、クレムリンで長年苦難を味わってきたドミトリー・ペスコフ報道官は記者会見で「これらの報道はまったくの虚偽だ」と断じた。その上で、ラブロフ外相は引き続き職務に当たっていると説明した。

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翻訳・編集=安藤清香

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