確かに今のところ、ラブロフ外相はそうしているように見える。しかし、8月の米アラスカ州での米露首脳会談後、ラブロフ外相はドナルド・トランプ米政権に対する対応を著しく誤り、先月ハンガリーの首都ブダペストで開かれる予定だった両首脳会談が中止された。これはプーチン大統領にとって大きな痛手となった。同大統領の戦略は4年近くにわたるウクライナ侵攻で、米国を傍観者にとどめておくことだったからだ。
クレムリン内部の関係者は、トランプ政権がロシアの強硬姿勢に耐えかねて、ウクライナ防衛に向けた欧州の取り組みを全面的に支援する方向に傾いた場合、ロシアに壊滅的な結果をもたらす可能性があることをよく理解している。そうなれば、フランス、ドイツ、ポーランドなどが現在ウクライナに供与している軍事装備を補う形で、米国の追加軍事支援が急増することになるかもしれない(実際、米政府の特別監察官が報告しているように、6月の時点で米議会がウクライナに割り当てた資金のうち、まだ支出されていないものが約600億ドル(約9兆円)相当ある)。また、これまで明らかに欠けていたもの、すなわち将来ロシアに侵略される恐れのある東欧諸国を含む脆弱(ぜいじゃく)な同盟国を守るため、米国の「民主主義の武器庫」を再構築する真剣な国家的取り組みが今後見られるかもしれない。
こうしたことが現実になるのを阻止することは、ロシア外交の頂点に立つ者にとって最も重要な優先事項であることは間違いない。だが、ロシアに対する米政権の姿勢が強硬になるにつれ、ラブロフ外相が役割を果たせていないことが痛々しいほど露呈しつつある。もちろん、根本的な問題は、いかに有能な外交官であろうと、ロシアの外相が擁護不可能なことを擁護するよう求められている点にある。遅かれ早かれ、ラブロフ外相はその罪を着せられることになるだろう。


