宇宙

2025.11.12 10:30

巨大な「恒星ストリーム」が渦巻銀河M61の周囲に存在 ルービン天文台が発見

南米チリのベラ・C・ルービン天文台で撮影された、おとめ座銀河団にある渦巻銀河M61(画像中央下)を取り巻く恒星ストリーム。長さ約17万光年(50 kpc)のストリームがM61から画像上方に伸びているのを確認できる(RubinObs/NOIRLab/SLAC/NSF/DOE/AURA/Process: Giuseppe Donatiello)

約25年前、いて座矮小楕円銀河として知られる銀河系の伴銀河が発見された。この矮小銀河はいまだ崩壊して銀河系に吸収される過程にあり、M61で今回発見されたのと同様の恒星ストリーム「いて座ストリーム」を形成している。

advertisement

いて座ストリームは、銀河系に重大な影響を及ぼしたと考えられており、地球がある太陽系の誕生を誘発した可能性もあると、ロマノフスキーは述べている。

数十億年にわたって銀河系を周回している、いて座矮小銀河(Sagittarius dwarf galaxy)と銀河系(Milky Way)との相互作用の様子を描いたイラスト。80億年前~現在の間に3回の衝突があり、活発な星形成を引き起こしたことが知られている。このうちの1回の衝突の影響で太陽系が誕生した可能性がある(ESA)
数十億年にわたって銀河系を周回している、いて座矮小銀河(Sagittarius dwarf galaxy)と銀河系(Milky Way)との相互作用の様子を描いたイラスト。80億年前~現在の間に3回の衝突があり、活発な星形成を引き起こしたことが知られている。このうちの1回の衝突の影響で太陽系が誕生した可能性がある(ESA)

銀河系のような大型の渦巻銀河と矮小銀河との間の重力による相互作用により、スターバースト(爆発的な星形成)と恒星ストリームが継続的に引き起こされている。実際に、M61の中心部には年齢が1000万年の銀河スターバースト領域が存在することが以前から知られている。

銀河ストーム

M61の中心にある超大質量ブラックホールに向けてガスを流入させた現象が過去10億年間にわたって繰り返し起きており、この「銀河ストーム」スターバーストは年代的に最も新しい流入現象を示すものだと、ロマノフスキーは説明している。

advertisement

今回の研究が、銀河分布全体を理解する上で重要になるのはなぜだろうか。

ロマノフスキーによると、宇宙に関する現代の理解では、宇宙は階層的に組み立られているとされる。すなわち、重力の影響下で、より大きな構造体がより小さな構造体で構成されるわけだ。M61に見られるような潮汐力によるストリーム構造は、人類の存在そのものを支えている宇宙の力の見えないネットワークの一部であり、そのネットワークの一部がこれからVROを通じて目に見えるようになると、ロマノフスキーは続けている。

将来の合体

恒星ストリームの軌道のコンピューターモデルを用いた今後の研究が、より大型の渦巻銀河M61に矮小銀河がいつ、どのようにして引き込まれたかや、M61に矮小銀河が完全に合体すると今後どのような結果になるかなどを理解する助けになることを期待していると、ロマノフスキーは述べている。

まとめ

銀河系は現在のところ、これほど活発な活動を示していないが、過去に同様の現象が複数回起きていることが銀河系の恒星の考古学的記録から明らかになっており、これはいて座ストリームの影響によるものかもしれないと、ロマノフスキーは指摘している。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事