宇宙

2025.11.12 10:30

巨大な「恒星ストリーム」が渦巻銀河M61の周囲に存在 ルービン天文台が発見

南米チリのベラ・C・ルービン天文台で撮影された、おとめ座銀河団にある渦巻銀河M61(画像中央下)を取り巻く恒星ストリーム。長さ約17万光年(50 kpc)のストリームがM61から画像上方に伸びているのを確認できる(RubinObs/NOIRLab/SLAC/NSF/DOE/AURA/Process: Giuseppe Donatiello)

南米チリのベラ・C・ルービン天文台で撮影された、おとめ座銀河団にある渦巻銀河M61(画像中央下)を取り巻く恒星ストリーム。長さ約17万光年(50 kpc)のストリームがM61から画像上方に伸びているのを確認できる(RubinObs/NOIRLab/SLAC/NSF/DOE/AURA/Process: Giuseppe Donatiello)

南米チリに建設された最新の天体観測施設、ベラ・C・ルービン天文台(VRO)の初期観測「ファーストルック」で得られた画像で、渦巻銀河M61を取り巻く巨大な恒星ストリームの検出が確認された。M61は約5300万光年の距離に位置し、顕著な渦状腕を持つグランドデザイン渦巻銀河だ。

今回の画像は、これまで天文学者が発見できていなかった銀河の恒星ストリームを検出するVROの比類のない観測能力を実証している。さらには、VROの他に類を見ない口径8.4m望遠鏡によってもたらされると見込まれる楽しみな成果の数々をまさに予見させるものだと、米天文学会の専門誌Research Notes of the American Astronomical Societyに掲載される今回の画像を説明した論文の筆頭執筆者で、米サンノゼ州立大学教授(物理学・天文学)のアーロン・ロマノフスキーはコメントしている。

この恒星ストリームは矮小銀河に起源を持つもので、全体の光度が太陽光度の約1億倍だと、ロマノフスキーは取材に応じた電子メールで述べている。恒星ストリームの幅と長さはそれぞれ約1万光年と約17万光年で、地球がある天の川銀河(銀河系)の直径(約10万光年)を上回っているという。

南米チリのベラ・C・ルービン天文台のファーストルック(初期観測)で撮影された画像で作成した、おとめ座銀河団領域の天体のファインダーチャート。画像右下隅に渦巻銀河M61と今回発見された恒星ストリームを確認できる(RubinObs/NOIRLab/SLAC/NSF/DOE/AURA)
南米チリのベラ・C・ルービン天文台のファーストルック(初期観測)で撮影された画像で作成した、おとめ座銀河団領域の天体のファインダーチャート。画像右下隅に渦巻銀河M61と今回発見された恒星ストリームを確認できる(RubinObs/NOIRLab/SLAC/NSF/DOE/AURA)

VROは同天文台のメインカメラの試験運用中に恒星ストリームを撮像した。試験運用はチリ北部の砂漠にある山の暗い山頂部で現在も続けられている。

おとめ座にあるM61銀河を取り巻く恒星ストリームのような暗い天体は、VROの望遠鏡による撮像によって非常に明瞭になる。

現代天文学の基本的な予測では、このような恒星ストリームがあらゆる銀河を取り巻いているとされるが、少数の例を除いて望遠鏡の性能がまだ不十分なため、これらの天体を確認できないのだと、ロマノフスキーは指摘している。

複雑な相互作用

ロマノフスキーによると、VROの試験観測の対象となった空の領域の1つが、銀河系に近い銀河の大集団であるおとめ座銀河団で、ファーストルックの画像では銀河団内の銀河が複雑に相互作用していることが確認できる。M61の中心部は直径約1500光年で、小型の渦状構造内にガスと一群の活発な星形成が見られる複雑な領域だという。

絶え間ない降着

今回の論文によると、銀河系のような巨大な渦巻銀河には矮小銀河が絶えず降着しており、これらが崩壊して恒星ストリームになる。

M61の恒星ストリームと銀河系にある同様の恒星ストリームを比較すると、どうだろうか。

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翻訳=河原稔

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