北米

2025.11.13 15:30

3.1兆円をどう活かす? フェイスブック創業者夫妻のデータと合理性に基づく寄付戦略

カーリー・ツナ 2014年撮影(Photo by Marvin Joseph/The Washington Post via Getty Images)

マラリア対策・安全な飲料水など、費用対効果の高い公衆衛生の取り組みに巨額支援

夫妻の「エビデンスに基づく寄付」はAI分野にとどまらない。これまでで最も多くの資金を注いできたのは、マラリア対策やビタミンA欠乏症の改善、安全な飲料水の確保といった費用対効果の高い世界的な公衆衛生の取り組みだ。これら課題は、トランプ政権による米国国際開発庁(USAID)の予算削減を受けて、緊急性を増している。

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ツナとモスコビッツは、自らの資産の大半をできるだけ早く寄付する意向を示しているが、資産規模が膨張し続けているため、実際には容易ではない。夫妻はすでに40億ドル(約6160億円)超を寄付しており、2025会計年度だけで6億ドル(約924億円)超を拠出している。彼らは現在も、モスコビッツ個人の資産として約110億ドル(約1.7兆円)、夫妻のプライベート財団「グッド・ベンチャーズ財団」には約100億ドル(約1.5兆円)、加えてドナー助成基金にも多額の資金を保有している。

モスコビッツが資産を築く一方で、ツナはその資産を社会に還元する役割を担ってきた。彼女は2011年から夫妻の慈善活動を主導しており、その間モスコビッツは自身の2つ目のスタートアップ、Asana(アサナ)の経営に専念していた。今年5月に同社のCEO職を退いた彼の今後の動きは明らかになっていない。

財団を共同ファンド化し、鉛曝露対策など新基金も設立

夫妻の寄付の大半は、グッド・ベンチャーズ財団やドナー助成基金を通じて行われている。助成金の推薦はすべてツナが2017年にGiveWell(ギブウェル)から独立させ、自ら会長を務めているOpen Philanthropy(オープン・フィランソロピー)によって行われている。現在ツナは、オープン・フィランソロピーを夫妻専用の基金ではなく、複数の寄付者が参加する共同ファンドへと発展させようとしている。今年のみで2億ドル(約308億円)を超える同基金への寄付は、他のビリオネアからのもので、参加者にはストライプ共同創業者のパトリック・コリソンや、グーグル共同創業者ラリー・ペイジの妻ルーシー・サウスワースらが名を連ねている。

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また、2人は1億ドル(約154億円)規模を超える2つのテーマ別基金の立ち上げを支援した。1つは昨年設立された有害金属による健康被害を防ぐことを目的とする「鉛曝露対策基金(LEAF)」、もう1つは今年3月に発足した「アバンダンス・アンド・グロース基金」だ。このうちLEAFはこれまでに2000万ドル(約31億円)を配分しており、その大半を占める1700万ドル(約26億円)はPure Earth(ピュア・アース)への助成金として、インドなどの国々でスパイスや陶器などに含まれる鉛汚染の原因を特定する活動に充てられている。

Open PhilanthropyのCEO、アレクサンダー・バーガーは、「非常に成功している財団が、他の人々の寄付に大きな影響力を及ぼすのは、きわめて珍しい」と語る。ツナ自身は通常、助成先と直接やり取りをしたり、自ら資金を募ったりすることはないが、バーガーとは毎週ウォーキング・ミーティングを行い、戦略や広報、そして今後数年でどの程度のスピードで資金を配分できるかといったテーマを話し合っている。

「私たちがこの活動を始めた当初、私たちのような寄付者──つまり、数十年にわたって数十億ドル(数千億円)を寄付し、分野を問わず人々を最も効果的に支援したいと考える人々──が参加できる場はほとんど存在しなかった」とツナは振り返る。「私たちは、次の世代の寄付者たちがすぐに活用できるリソースを築きたいと考えている」と、バーガーは付け加えた。

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翻訳=上田裕資

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