今回で25回目を迎えた、フォーブスの年次リスト「セレブの死後収入ランキング」2025年版には、ノトーリアスB.I.G.、マイルス・デイヴィス、ジミー・バフェットなどが新たにランクインし、天国で最も稼ぐミュージシャンの仲間入りを果たした。また、マイケル・ジャクソンが死後に稼いだ総額は、35億ドル(約5390億円。1ドル=154円)に達している。
2001年に発表された第1回のランキングでは、エルヴィス・プレスリーがトップに立っていた。その後の25年間、彼は毎回リスト入りし、その間に累計12億ドル(約1848億円)以上を稼ぎ出した。だが、セレブの死後の収入モデルを根本から変えたのは、別の「ポップミュージックの王様」でかつてエルヴィスの義理の息子でもあったマイケル・ジャクソンだ。
2009年の死以降、ジャクソンの遺産管理団体はフォーブスの推計で35億ドル(約5390億円)という驚異的な金額を稼ぎ出しており、今年も年収1億500万ドル(約162億円)で堂々の首位を維持している。「遺産ビジネスの世界の頂点にはマイケル・ジャクソンがいて、その下には大きな谷を隔てて“その他大勢”がいる」とある著名な遺産弁護士はフォーブスに語った。
巨額の収益の多くは、生前に彼が築いた資産から生まれた。ジャクソンは自身の楽曲の出版権とマスターテープを所有していただけでなく、1985年には現在の価値で約1億4200万ドル(約219億円)にあたる4750万ドル(約73億円)でATVミュージックのカタログを買収していた。このカタログには、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが共作したほぼすべてのヒット曲を含む約4000曲が収められていた。
その投資は2016年、遺産管理団体がソニーに持ち分を売却した際に現在の価値で約10億ドル(約1540億円)にあたる7億5000万ドル(約1155億円)のリターンを生み出した。この取引にはジャクソン自身の出版権とマスター音源は含まれていなかったが、2024年に同団体は資産の50%をソニーに6億ドル(約924億円)で売却。この決定に母キャサリン・ジャクソンは強く反発し、「マイケルの遺志に反する」として法廷で取引の差し止めを求めた。
ジャクソンのブランドは、こうした大型ディールの合間にも途切れることなく多方面で収益を生み続けており、彼の晩年を覆った性的虐待疑惑や、それを題材にした2019年のドキュメンタリー『『Leaving Neverland(邦題:ネバーランドにさよならを)』の影響をほとんど受けていない。2009年に公開された死後のコンサート映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』は、世界で2億6700万ドル(約411億円)の興行収入を記録した。
2012年のシルク・ドゥ・ソレイユによる「マイケル・ジャクソン・ザ・イモータル・ワールドツアー」も1億6000万ドル(約246億円)を稼ぎ、その年最も成功したコンサートツアーとなり、ジャクソンは存命のどのミュージシャンよりも多くの収入を得ることになった。
この成功を足がかりに、シルク・ドゥ・ソレイユは2013年からラスベガスで常設公演『マイケル・ジャクソン・ワン』を上演し、2022年にはブロードウェイで『MJ ザ・ミュージカル』が初演された。両作品のチケット売上は合わせて約3億ドル(約462億円)に達し、海外版の公演も次々と生まれている。
ポップミュージックは世界中で愛されており、スター歌手の印税の取り分が、映画やテレビの出演者に比べて大きいこともあり、今年もランキング上位はミュージシャンが独占した。トップ13のうち10人が音楽関係者で、税引き前・手数料控除前の合計収入は5億4100万ドル(約833億円)に上る。プリンスやジョン・レノン、ボブ・マーリーといった音楽界のアイコンは、マスター音源と出版権から今も毎年数百万ドル(数億円)規模の収益を上げている。
一方、今年は複数の新顔がランクインしたが、彼らは生前に築いた印税収入の権利を、プライベート・エクイティの出資を受けた第三者に売却して富を築いている。パンデミック期の狂乱相場の頃には、取引額が売上の20倍に達することもあり、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーンが数億ドル(数百億円)単位で権利を売却したが、当時と比べると、音楽資産の市場はやや落ち着いた。それでもここ1年で、ノトーリアスB.I.G.、マイルス・デイヴィス、そしてピンク・フロイドの2人が、公開市場で巨額の契約を手にした。
他のセレブの遺産管理団体は、故人の名を冠した商品からロイヤリティを得ている。たとえばアーノルド・パーマーの名を冠した飲料は、年間約2億ドル(約308億円)を売り上げており、ナイキのコービー・ブライアントのスニーカーも依然として店頭で飛ぶように売れ続けている。ジミー・バフェットの「マルガリータビル」ブランドにいたっては、衣料品からホテル、その世界観をもとにした高齢者向けコミュニティまで、名前を付ければどんな商品でも売れてしまう勢いだ。
死後も人気が衰えず、作品や肖像権を家族が握っている著名人はごくわずかだ。かつてこのランキングに名を連ねたマリリン・モンロー、アルベルト・アインシュタイン、モハメド・アリの権利もすでに家族の手を離れている。
それでも、今年の「幸運な13人」にとっては、あの世の道もいまだに黄金で舗装されているようだ。以下に、「セレブの死後収入ランキング」2025年版を掲載する(カッコ内は、過去1年間の収入)。



