気候・環境

2025.11.17 16:15

環境保全と経済成長 海の取り組みから考える「両立」する未来

太平洋で群泳するマグロ。写真の大半はメバチマグロ、一部にカツオも混じっています。(c)Conservation International

太平洋で群泳するマグロ。写真の大半はメバチマグロ、一部にカツオも混じっています。(c)Conservation International

日本では、古くから海が私たちの文化と食を豊かにしてきました。築地の市場から家庭の食卓まで、海の恵みは日常の中に深く息づいています。しかし、気候変動はそのつながりを確実に変えつつあります。海水温の上昇は食文化を揺るがし、強まる台風は人々の生活基盤を脅かしています。

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この危機に対して、日本には何ができるでしょうか。世界有数の科学技術、金融、人材を有する島国として、海の持続可能性をいかにリードしていけるか。そのカギは、「どれだけ大胆に行動できるか」にあります。

本稿では、海の課題を新たな成長とレジリエンスの機会に変える、いくつかの革新的な取り組みを紹介します。

地域経済を動かす、新たな水産モデル

私たちの食卓に並ぶマグロの多くは、世界のマグロの半分以上が水揚げされる太平洋からやってきます。長い間、外国船がこれらの海域で漁を行い、加工の多くは海外で行われてきました。その結果、現地の経済にはほとんど利益が還元されていません。

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この構造を変えようとしているのが、「パシフィック・アイランド・ツナ」です。世界最大規模の自然保護団体ネイチャー・コンサーバンシーと、マーシャル諸島海洋資源庁が協働して立ち上げたこの仕組みは、漁獲から小売までの一連のプロセスにおいて、太平洋諸島の国々自身が主導権を持つことを可能にし、トレーサビリティと公正な労働の基盤を築いています。

世界最大のマグロ出荷港の1つであるマーシャル諸島のマジュロ市では、現地での加工率を3%から30%へ引き上げるための投資が進んでいます。これにより、約1000人の雇用が生まれ、3300万ドル相当の付加価値が創出される見込みです。得られた利益は海洋保全や気候変動対策に再投資され、持続可能性そのものが地域成長の原動力となります。

ウォルマートをはじめとする小売大手も、直接調達パートナーシップを通じて、このモデルへの長期的な関与を強め、その商業的な可能性を示しています。

しかし、この取り組みの真の価値は、長年グローバルな水産経済から排除されてきた島国の人々に、主導権を取り戻すことにあります。

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