「仕事を辞めて休む」と聞くと、多くの人が不安を感じるのではないだろうか。キャリアに穴が開く、収入が途絶える、復帰できなくなるかもしれない——。そんな懸念から、心身の限界を感じても働き続ける人は少なくない。
しかし一般社団法人キャリアブレイク研究所が発表した『キャリアブレイク白書(2025)』は、そうした不安とは対照的な実態を示している。一時的に仕事から離れる「キャリアブレイク」を経験した311人を対象にした調査で、約8割が満足していると回答。さらに96.4%が他人に勧めたいと答えているのだ。

35人に1人が経験している
キャリアブレイクとは、休暇、休職、離職などを通して今までの中心的な役割を手放し、人生と社会を見つめ直す期間のことを指す。厚生労働省のデータから推測すると、常用労働者35人に1人が1カ月以上のキャリアブレイクを経験している計算になる。
決断のきっかけは「心身の不調」が58.5%でトップ。決断までの期間は「1~6カ月」が44.7%と最も多く、1カ月以内の30.9%を含めると、7割以上が半年以内に決断している。追い詰められた末の選択というより、比較的早い段階で決断している人が多い実態が見えてくる。
キャリアブレイクは4つの型に分類
同研究所の調査によると、キャリアブレイクは大きく4つの型に分類される。妊娠・出産・病気・家族のケアをきっかけとした「ライフ型」、職場でのハラスメントや激務・体調不良をきっかけとした「グッド型」、疲れや節目をきっかけに感性の回復を目的とする「センス型」、そして大学院・ワーキングホリデー・旅行・新たな挑戦をきっかけとした「パワー型」だ。
つまりキャリアブレイクは、やむを得ない事情による休職だけでなく、自分を見つめ直すための積極的な選択としても機能している。

期間中は「休養」だけではない
キャリアブレイクの期間は半年から1年が中心で、全体の41.8%が半年と回答した。興味深いのは、期間や計画を「決めていた」人と「決めていなかった」人が半々だったことだ。必ずしも綿密な計画が必要というわけではなく、ある程度の柔軟性を持って始める人も多い。
期間中の過ごし方は、複数回答で7割以上が「休養・睡眠」を挙げたが、それだけではない。約半数が「人間関係の見直し」「内省・自己探求」「趣味・創作活動」「旅行」などにも取り組んでいた。
学習やリスキリング、資格取得、起業準備、地域活動、ワーケーションなど、活動は多岐にわたる。単なる休息期間ではなく、自分を見つめ直し、新たな一歩を準備する時間として活用している様子がうかがえる。



