働き方

2025.11.14 07:15

仕事を辞めて休んだ人の8割が満足。「キャリアブレイク」白書2025

貯蓄と失業手当で乗り切る

キャリアブレイクを始める際の貯蓄額は「500万円以上」が31.2%で最多だったが、「50万~200万円」が26.4%と、分布にばらつきがあった。期間中の収入源は、失業手当など公的支援が54.0%と最も多く、次いでアルバイト・臨時収入が24.1%、貯金のみが22.5%となった。副業や家族からの支援で乗り切った人も一定数いた。

年収は下がるが満足度は高い

その後のキャリアは、異業種転職が35.7%と最多だったが、21.2%は元の会社に復帰している。年収は約半数が下がったものの、変わらない人が23.2%、上がった人も25.7%いた。

それでも満足度が10点満点で平均8.0点と高い理由は何か。満足度の高かった経験者からは「15年くらいは自分の土台になるような経験資本ができた」(30代男性)、「立ち止まる時間で自分の軸を取り戻せた」(40代女性)といった声が寄せられた。

一方、満足度の低かった層からは「周囲からおいていかれる焦りが強かった」(40代女性)という声もあり、周囲との比較が満足度を下げる要因になっている可能性がある。

周囲の反応は賛否両論も本人は満足

周囲の反応は、肯定的が48.0%、どちらともいえないが35.4%、否定的が16.6%という結果だった。約半数が肯定的に受け止められているものの、必ずしも全面的に理解されているわけではない。それでも96.4%が他人に勧めたいと答えている背景には、周囲の評価以上に自分自身が得たものの価値を実感しているからだろう。

キャリアブレイクをめぐる最大の障壁は、制度や経済的な問題以上に、休むことへの罪悪感なのかもしれない。働き続けることが美徳とされる文化の中で、立ち止まることは「逃げ」や「甘え」と見なされがちだ。

しかし今回の調査が示すのは、実際に経験した人の圧倒的な満足度の高さだ。筆者自身も22年勤めた会社を辞めて2年間大学院に通った経験がある。当時は不安もあったが、学生という立場だけに専念した時間は、その後のキャリアの土台になった。

キャリアブレイクが「次に進むための準備」として認識される社会になれば、もっと多くの人が自分のペースでキャリアを築けるようになり、企業にとっても長く働いてくれる社員の育成に寄与できるのではないだろうか。

【調査概要】
調査対象:キャリアブレイク経験者311人
発表時期:2025年10月
調査方法:質問紙調査
※法政大学、早稲田大学の教授らとの共同研究成果を含む

プレスリリース

文=池田美樹

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