WOMEN

2025.11.11 16:00

「アジアで影響力のあるビジネスウーマン20人」2025年版、日本の女性CEOも登場

Shutterstock.com

カシコン銀行(Kバンク)CEOのカティヤ・インダラビジャヤ
カシコン銀行(Kバンク)CEO

約40年にわたりカシコン銀行(Kバンク)でキャリアを築いてきたカティヤ・インダラビジャヤは、数々の「初」を成し遂げてきた人物だ。2016年に同行初の女性社長となり、初の女性CEOにも就任。そして創業家であるラムサム一族以外から初めてCEOに就いた経営者でもある。彼女が語る成功の秘訣は明快で、「常に準備を怠らず、変化を受け入れ、あらゆるチャンスを最大限に生かすこと」だと述べている。

advertisement

今年6月時点の資産総額が4兆4000億バーツ(約22兆円。1バーツ=5円換算)を誇るカシコン銀行は、タイで第3位の銀行に位置づけられている。景気減速の影響で2025年上半期の純利益は263億バーツ(約1315億円)にわずかに減少したものの、投資家の期待は高く、株価は年初から18%上昇。彼女がCEOに就任して以降、時価総額は2倍以上に拡大した。

同行のモバイルバンキングアプリ「K Plus」は、利用者数が2300万人を超えるタイでも屈指の人気サービスであり、カティヤが推進するデジタル戦略の中心的存在となっている。彼女はまた、銀行口座を持たない人々や中小企業、自営業者などにも金融サービスを広げている。

カティヤは、バンコクのチュラロンコン大学で経営学士号を取得した後に、同行からの奨学金を得て、米テキサス大学オースティン校でMBAを取得した。

advertisement

ルチ・カルラ(42歳/インド)
オキゾ・ファイナンシャル・サービス取締役兼CFO

ルチ・カルラが2017年に共同で立ち上げ、最高財務責任者(CFO)を務めるオキゾ・ファイナンシャル・サービスは主に中小企業向けの融資を手掛けており、7年連続で黒字を維持している。同社は、2025年度に純利益34億ルピー(約58億円。1ルピー=1.71円換算)と、売上高112億ルピー(約192億円)を計上した。インフラや小売、製造業などの多様な業種で5万社の中小企業を顧客に抱えるフィンテック企業であるオキゾは、2022年5月の初の調達ラウンドでノーウエスト・ベンチャー・パートナーズやタイガー・グローバルといった著名VCから2億ドル(約308億円)を調達してユニコーン企業となった。

同社は、その年にカルラが2015年に夫のアシシュ・モハパトラとともに設立した親会社オブビジネスから分離・独立した。オブビジネスは、中小企業がセメントや鉄鋼などの原材料を調達できるBtoBプラットフォームで、2021年にはソフトバンクが主導した資金調達でユニコーン企業となり、これまでに累計8億8000万ドル(約1355億円)を調達。現在は最大10億ドル(約1540億円)規模のIPOを計画中と報じられている。2024年3月期の連結純利益は60億ルピー(約103億円)、売上高は1930億ルピー(約3300億円)に達した。

デリー工科大学で化学工学を学び、インド経営大学院(ISB)でMBAを取得したカルラは、マッキンゼーに勤務時代に夫のモハパトラと出会ったという。

マーガレット・カオ(74歳/台湾)
マーケテック・インターナショナル会長兼CEO

1988年、同僚とともにマーケテック・インターナショナルを設立したマーガレット・カオは、政府系研究機関である工業技術研究院(ITRI)で課長を務めていた当時に「新たな突破口を見つけたかった」と語っている。同研究院はその10年ほど前に、ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス(UMC)や台湾積体電路製造(TSMC)をスピンオフしており、カオはそれら半導体工場に欠かせない特殊素材や製造装置を供給する新会社の設立を構想した。彼女が立ち上げたマーケテックは、クリーンルームや水処理システムをはじめとする高精度設備や一括請負サービスを手がける企業へと発展し、現在では半導体、光電子、生物工学といった分野の世界的サプライヤーとして知られている。顧客には、TSMCやオランダの半導体製造装置大手ASML、米メモリメーカーのマイクロン・テクノロジーなどが名を連ねる。

台北に拠点を置く同社の2024年の売上高は前年比8%増の607億台湾ドル(約3035億円)で、5年連続で増収を達成した。先端半導体への旺盛な需要を背景に、各ファウンドリーが生産能力の拡大を進めていることが追い風となった。「努力を怠ることは決してない。顧客が成果を上げれば、その成長が私たちを成長させてくれる」と語るカオは、国立台湾大学で経営学の修士号を取得した。

2018年には鴻海傘下の産業用コンピュータメーカー、エンノコンが49億台湾ドル(約245億円)でマーケテックの株式47%を取得した。その後、保有比率を38.5%に引き下げたものの、その価値は現在180億台湾ドル(約900億円)に達している。カオ自身はマーケテックの株式の6%を保有している。

ジェイミー・クー(61歳/シンガポール)
デイワン・データセンターズCEO

シンガポールのデータセンター運営企業、デイワン・データセンターズCEOのジェイミー・クーは、「AI分野の動きは活発だ」と語る。同社は、年内に2件のプロジェクトを完了させようとしており、さらに3件の新規案件の着工も進めている。AI向けのインフラ整備をめぐり業界各社が競う中、「今後数年間、需要は持続的に伸びるだろう」とクーは述べている。データセンター業界のベテランである彼女は昨年、上海を拠点とするデータセンター大手GDSホールディングスの国際部門トップに就任した。GDSはその後、デイワン・データセンターズをスピンオフし、クーがそのCEOに就任した。

デイワンは現在、合計350メガワット(MW)の容量を持つ14カ所のデータセンターを運営しており、中国や米国のハイパースケーラー、銀行・金融機関などの企業ユーザーを主な顧客としている。同社はインドネシア、日本、香港、マレーシア、シンガポール、タイにおいて25カ所以上の新施設建設を契約済みで、2027年初頭までに総容量を800MW超に拡大する計画を進めている。デイワンは、これまでに2回の資金調達で19億ドル(約2926億円)を集め、約40億ドル(約6160億円)の融資を受けて拡張資金を確保している。クーによると同社は2030年までに総容量を2ギガワット超に伸ばす見通しで、そこには2年後の完成を予定するフィンランドの12億ユーロ(約2124億円。1ユーロ=177円換算)のハイパースケール・データセンターが含まれる。「AIは私たちを新しい環境へと導くだろう。私たちはそれがどんな形になるのかを見極めようとしている」とクーは話す。

彼女は、2014年に副CFOとしてGDSに入社する以前は、シンガポールの政府系企業STテレメディアで10年間勤務し、データセンタープロジェクトの資金調達に携わっていた。デイワンの投資家には、ソフトバンクやシタデル創業者兼CEOのケン・グリフィンが名を連ねており、GDSは同社の少数株を保有している。

マナシ・キルロスカル・タタ(36歳/インド)
トヨタ・キルロスカル・モーター副会長

インドの老舗コングロマリット、キルロスカル・グループの5代目にあたるマナシ・キルロスカル・タタは、同国の自動車業界の新世代を象徴する存在だ。彼女は、インドの自動車業界の重鎮と呼ばれた父のヴィクラム・キルロスカルの急逝から2カ月後の2023年1月、トヨタ自動車のインド法人トヨタ・キルロスカル・モーター(TKM)の副会長に就任した。

TKMの今年3月までの1年間の売上高は、前年比28%増の6490億ルピー(約1.1兆円)と過去最高を記録した。同社は、SUVからハイブリッド車まで幅広い人気車種を手がけており、バンガロール近郊にある2つの工場で生産を行うほか、3つ目の工場を近隣に建設中だ。

キルロスカル・タタは、米国のロードアイランド・スクール・オブ・デザインを卒業した翌年の2013年にTKMに入社し、3年間にわたり製造工程や品質管理、日本的な職場のカルチャーを学んだ。彼女はまた、10年以上にわたりTKMの出資元である母ギータンジャリ・キルロスカルが所有するキルロスカル・システムズの取締役も務めている。

キルロスカル・タタは、社会貢献活動にも積極的で、自身の非営利団体「Caring with Colour」を通じて、インド各地の5100校を超える公立学校に学習プログラムを提供している。彼女の夫のネヴィル・タタは、タタグループの複数の企業で会長を務めるノエル・タタの息子だ。

次ページ > シャングリラ・アジア会長兼CEOのクオック・ホイ・クオン

翻訳=上田裕資

タグ:

連載

Forbes WOMAN

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事