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2025.11.11 10:30

OpenAIが破綻しても、サム・アルトマンCEOは「無傷」で済む

Photo by Andrew Harnik/Getty Images

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人工知能(AI)投資が過熱する中、米OpenAIは2025年に次々と大型契約を結び、現時点の財務規模では到底まかなえないほどの支出を約束している。では、もし同社が支払い不能に陥ったら、誰が責任を負うのか? それはCEOのサム・アルトマンではない。

数千億円規模の契約を連発するOpenAI、その支払い能力に高まる疑問

OpenAIのサム・アルトマンCEOはここ数カ月にわたり、怒涛の勢いで取引をまとめており、オラクルやエヌビディア、マイクロソフト、AMD、ブロードコム、そして最近ではアマゾンといった世界有数のテック企業と、数十億ドル(数千億円)規模の契約を次々に発表している。彼が今後数年間でデータセンターに投じると約束した金額は総額1兆4000億ドル(約215.6兆円。1ドル=154円換算)に及ぶ。

この支出計画は、年間売上が今年200億ドル(約3.1兆円)に達すると見込む企業にしては、あまりにも巨額だ。テック業界全体が今やOpenAIの行方に左右される中で、誰もが抱く疑問がひとつある。──もしアルトマンが支払いに窮したら何が起こるのか?

OpenAIの最高財務責任者(CFO)サラ・フライアーは、先日のイベントで、政府が同社の契約の下支えとなる可能性を示唆するように受け取れる発言をしたが、後にこのコメントを取り下げた。アルトマンは、これを受け、Xに長文を投稿した。

「もし私たちが失敗して修復できなければ、OpenAIは倒れるべきだ。そして他の企業が良い仕事を続け、顧客にサービスを提供していくだろう。……もちろん、私たちが間違っている可能性もあるが、もしそうなった場合に対処を行うのは政府ではなく市場だ」。

グーグル規模の売上が必要か──契約履行への高いハードル

現時点の見通しは芳しくない。OpenAIが巨額のコンピューティング契約を履行するためには、2029年までに年間売上を推定5770億ドル(約88.9兆円)に引き上げる必要がある。──これは同年のグーグルの売上規模にほぼ匹敵する数字だと、ベンチャーキャピタルTheory Venturesのゼネラルパートナー、トマシュ・トゥングズは最近のブログで指摘した。つまり、2025年の売上予測との比較で、約2900%の増加になる計算だ。

支払い不能リスクの回避策は、契約の再交渉という選択肢

それでもOpenAIには選択肢がある。D.A.デイビッドソンのアナリスト、ギル・ルリアによれば、もっともあり得るシナリオは、OpenAIが契約した計算資源のうち、実際に支払いを行い、利用するのを一部にとどめるというものだ。その場合、オラクル、アマゾン、マイクロソフト、コアウィーブなどの供給企業は、少なくともある程度の取引を維持するために契約を再交渉する可能性が高い。「彼らはOpenAIに破綻してほしくない。だからこそ再交渉するインセンティブがある」と、ルリアはフォーブスに語った。

契約の再交渉は、データセンター業界では珍しいことではない。こうした契約は極めて複雑で、通常は複数年にわたって履行されるもので、当初の約定を満たせない場合は、契約期間を延長できる条項が設けられているケースも多い。OpenAIのような顧客は通常、実際の使用量に基づいて請求を受ける。

データセンターの専門家のダニエル・ゴールディングによれば、「当初発表される巨額の数字」は、実際の契約上の確約額を上回る場合が多く、株価、データセンターの建設コスト、GPU価格といった変動要因に左右される。たとえば、OpenAIはAMDのチップを最大6GW分(推定約900億ドル[約13.9兆円]相当)購入する契約を結んでいるが、この取引はAMD株約10%と引き換えとなる見通しで、双方で現金は動かない。この契約も、OpenAIの技術面および事業上の成果指標、そしてAMDの株価に左右される。

また、これらの契約には多くの場合、不確定要素がつきものだ。電力供給やチップの供給制約のため、インフラ事業者の中には納期どおりに提供できない可能性があり、そうなればOpenAIが契約上の巨額支出から抜け出す余地が生まれる。たとえば、コアウィーブとの総額224億ドル(約3.4兆円)に及ぶ契約には、いずれの当事者も「正当な理由」があればいつでも契約を解除できるという条項がある。

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翻訳=上田裕資

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