宇宙

2025.11.10 08:17

製造業の真の月面計画:月面原子力発電所

AdobeStock

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NASAがSF小説のような構想に取り組んでいる:月面に原子炉を建設するというものだ。同宇宙機関は、月面原子力発電を実現するために必要な技術開発を企業に委託する契約の準備を進めており、2030年までに原子炉を打ち上げることを目標としている。

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成功すれば、宇宙探査と月面での人類の恒久的な存在確立に大きな意味を持つだろうが、ここにはもう一つの側面がある。月面原子力が実現するとすれば、それは地球上の製造業者たちの力によるものだ。先進合金から精密機械加工まで、製造業者たちはNASAの野心的なビジョンを実現する中心的存在なのだ。

さらに重要なのは:原子力の勢いが続けば—月面でも、そして地球上でも—それは必要な材料やシステムを設計、製造、改良する企業にとって長期的なビジネスチャンスを意味することになる。

そもそもなぜ月に原子力を置くのか?

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少し立ち止まって考えてみよう。米国—そして同様の野望を持つロシアや中国—は月に原子力を設置することで何を達成しようとしているのか?まず第一に、それによって月で最も資源が豊富な地域に恒久的な拠点を確立する能力が得られる。「月には誰もが最高だと知っている特定の場所がある」とNASA長官のショーン・ダフィー氏は言う。「そこには氷がある。太陽光がある。我々はそこに最初に到達し、アメリカのために確保したいのだ」。

これまで、月面の宇宙船のエネルギー源としては主に太陽光パネルが使用されてきたが、2週間ごとに日光が消えるという制限がある。そこでNASAのアルテミス計画では、70〜80世帯分の電力を供給できる出力を持つ原子炉を設置することを目指している。

これには宇宙飛行士が月面で組み立てるための原材料の輸送が含まれる。まだ解決すべき物流上・工学上の課題は多い。その中には、原子炉を安全に月まで運ぶことや、元バイデン政権顧問の工学教授がNPRに語ったように、今から約80年後と思われる寿命が尽きた時の取り扱い方法などがある。

製造業の課題

NASAの原子炉は空気中から突然現れるわけではない。それは地球上の製造業者によって建設されるのだ。

この原子炉は摂氏250度に達する昼と、マイナス200度まで急降下する夜に耐えなければならない。また、大気のない場所で機能するように設計されなければならない。つまり、原子炉を冷却し余分な熱を放出するための水がないということだ。代わりに、「月面の原子炉は余分な熱を直接宇宙に放射する必要がある」とNPRは報じており、「熱負荷を放散するのを助ける大型のラジエーターを使用する」という。

金属、複合材料、材料科学の製造業者がこの開発の中心となる可能性がある。すべての部品は、ロケット打ち上げ時の振動に耐え、ペイロード制限に収まる十分な軽さを持ち、人間の監視なしで確実に動作する必要があると考えられる。そのため、精度が重要であり、機械加工や積層造形などのプロセスが不可欠となる可能性がある。

技術はすでに存在するが、すべてをまとめ上げ、安全な輸送と設置を確保することが課題となる。航空宇宙、原子力、先端材料にまたがる緊密に連携したサプライチェーンなしには、これらは実現しない。NASAの契約は最大手の企業だけでなく、地域の製造業者も貢献する可能性があり、彼らにとって真に歴史的なプロジェクトへの参入点となり得る。

地球上の製造業への影響

最終的には、より大きなチャンスが私たちの身近に存在するかもしれない。うまくいけば、NASAのプログラムは地球上での小型モジュール炉(SMR)の採用を加速させるだろう。キャナリー・メディアによると、すでに150億ドル以上の公的・民間資金がSMR分野に流れ込んでおり、数十基の原子炉が積極的に開発されている。

これらの原子炉は工場で製造され、輸送可能であり、初期市場が形成され始めている。例えば、データセンターはAIの台頭に関連する電力網への負担を軽減しようとしており、SMRを将来の清潔で専用の電力源と見なしている。製造業者や工業団地もこれに続く可能性があり、もしそうなれば、工場でのエネルギー利用の考え方が革命的に変わるだろう。

月面プロジェクトが原子炉は地球よりも過酷な条件下でも安全に運転できることを証明すれば、地球での展開の可能性が高まる。早期に参画した製造業者は、新しい製品カテゴリーを形作る立場を得ることになる。

原子力の未来

これは単なる宇宙の話ではなく、エネルギーの話でもある。月面での原子力発電は、モジュール式原子力が地球上で実用的かつスケーラブルになるきっかけとなり、製造業者にとって大きな意味を持つ可能性がある。

競争は現実のものだ。ロシア、中国、その他の国々も同様に今後10年の終わりまでの展開を目指している。しかし、チャンスも同様に現実的だ。今日NASAの成功を支援する企業は、明日のクリーンエネルギー経済をリードする存在になるかもしれない。これこそ注目に値するムーンショットだ。

forbes.com 原文

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