米連邦最高裁判所の判事たちは先週、ドナルド・トランプ大統領が米国の輸入品に課している広範な関税を無効にする可能性をちらつかせた。実際にそうなれば、関税の価格転嫁による負担が増しつつある米国の消費者には救済になる。だが、既存の関税が無効にされたとしても、ほかの法的根拠が持ち出されて関税が再導入される可能性は残る。
関税の価格転嫁がいよいよ進む
連邦最高裁は5日、トランプによる関税措置をめぐる訴訟2件の口頭弁論を開いた。判決の行方はまだ不明だが、保守派寄りの複数の判事でさえトランプ関税に懐疑的な見方を示し、最高裁が関税を無効にする可能性が浮上している。
トランプはほとんどの国を対象に、大半の輸入品に対して10〜50%の広範な関税を課した。その結果、米国の多数の輸入企業が以前よりも大幅に高いコストの支払いを強いられている。
フォーブスの取材に答えた貿易専門家たちは、企業側は関税が長期化し、コスト上昇分を吸収し続けるのが難しくなるなか、消費者側に転嫁するケースが増えていると説明している。
年間売上高10億ドル(約1540億円)以上の企業の経営者を対象にKPMGが10月に実施した調査では、向こう6カ月以内に最大5%の値上げを計画する企業が42%にのぼった。29%は6〜15%の値上げを計画している。
ゴールドマン・サックスのアナリストらは10月のリポートで、2025年末までに消費者が関税コストの55%を負担することになるとの試算を示した。関税が維持された場合、その割合は2026年末には70%に達すると予測している。
最高裁がトランプ関税を無効にすれば、消費者は継続する価格上昇から一時的に救われる可能性がある。とはいえその場合、トランプ政権は別の法律に基づく新たな関税を導入する方針を示しており、消費者の負担が完全になくなるとは限らない。
企業による関税コストの吸収は限界に
大手物流会社ジオディスの通関業務担当シニアバイスプレジデント、ブライアン・ライリーは「多くの企業は(関税による)コストをもはや吸収できなくなっており、そのコストは何らかの形で消費者に転嫁されるケースが増えている」とフォーブスに述べた。トランプ関税は「サプライチェーン(供給網)の大きな混乱要因」になっているとも指摘した。



