金(ゴールド)か銀(シルバー)か? これは投資家の間で永遠に続く議論となっている。両金属とも輝きを放ち、長い歴史を背負い、金融混乱が生じた際にも価値を維持すると期待されている。しかし、金か銀の1つだけを選ばなければならないとしたら、どちらをポートフォリオに入れたいだろうか? 市場環境とともに、複数の事実に基づくデータを検証してみよう。
金は一貫して究極の安全資産と見なされてきた。つまり、物価上昇時や株式市場の不安定時に人々が殺到する金属だ。また、中央銀行にとっても好ましい選択肢で、金の蓄積が続いている。金は現在、持続的なインフレと近い将来の金利低下への期待に支えられ、過去最高値に近い水準で取引されている。歴史的に見て、金と銀を比較すると、金の方が安定した選択肢だった。刺激は少ないが、景気後退期には神経をすり減らすことも少ない。過去10年間で、金の年間平均リターンは約7.7%だったのに対し、銀は約6%だった。さらに1960年代までさかのぼると、金の価格は9000%以上上昇したのに対し、銀は4000%の上昇にとどまっている。
一方、銀は別の領域で活動している。貴金属としての役割と産業用重金属としての役割の両方を担っているのだ。銀は太陽光パネルや電気自動車(EV)から電子機器や医療機器に至るまで、さまざまな用途に活用されている。この二面性により、銀は二重の性質を持っている。つまり、経済が好調な時には大きな利益をもたらすが、低迷すると深刻な打撃を受けることもある。銀は市場規模が小さく産業との結び付きが強いため、価格変動が激しい。条件が整えば、銀は大きく伸びる可能性がある。2020年に金が約30%上昇したのに対し、銀は約45%急騰した事例がそれを示している。逆に、市場心理が悪化すると、銀の価格は大幅に下落することもある。
別の視点として、金銀比価(GSR)がある。これは、1トロイオンスの金を購入するのに何トロイオンスの銀が必要かを示すものだ。古代ローマでは、この比率は約12対1だった。ここ数十年では、平均値は通常60対1に近い数値を示している。現在、GSRは85~90前後だ。この比率が特に高くなると、通常は銀が金に比べて低く見積もられていることを示しており、一部の投資家が銀の保有量を増やすきっかけとなる。しかし、この戦略のタイミングを正確に計るのは、見た目以上に難しい。
実用的な観点からは、金は保管、輸送、売却が容易だ。少数の金貨はかなりの価値を持つ一方、同等の価値を得るには大量の銀貨が必要となる。とはいえ、銀は新規投資家にとってはるかに手に入れやすい。数万円あれば始められるからだ。心理的にも、小さな金貨1枚より、本物の有形の金属を複数所有する方が満足感がある。
では、どちらが優れた選択肢なのだろうか? 正直なところ、それは読者の目的次第だ。資産を守り、夜も安眠したいのであれば、金の方が安定した選択肢となる。市場の下落局面や為替変動時には、金はより良好なパフォーマンスを示す傾向がある。一方、より大きなリターンの可能性を求め、変動の激しい道のりをいとわないなら、銀の方が魅力的かもしれない。特にクリーンエネルギーや電子機器などの分野からの需要が引き続き高まるならなおさらだ。
最も賢明な投資家は、安定性のために金を、成長の可能性のために銀と、双方を保有する傾向がある。金と銀はポートフォリオの強力なコンビだと考えてみよう。一方は静けさをもたらし、もう一方は興奮を与えてくれる。インフレや技術革新、不確実性が交錯し続ける世の中で、両金属を組み合わせた運用こそがリスクを軽減し、ポートフォリオの輝きを保つための最善策と言えるだろう。



