ロシア軍は2023年以降、ミサイルと無人機攻撃により、ウクライナの他の3つの原子力発電所(南ウクライナ、フメリニツキー、リウネ)に電力を供給する変電所を繰り返し標的にしてきた。国際原子力機関(IAEA)は定期的にザポリッジャ原子力発電所を訪問し、最近ではウクライナ国内の他の原子力発電所も視察している。同機関は現状を「原子力安全に対する危険が依然として極めて現実的で常に存在する」状況だと説明している。同機関のラファエル・グロッシ事務局長は最近、改めて「原子力施設の周辺での最大限の軍事的自制」を求めた。
弱まりつつある世界の核抑止力
これらの事例を総合すると、核抑止力が著しく弱体化したことが示されている。核戦争という概念は、もはやかつてのような予防的な恐怖や非現実性を伴わなくなった。本稿ではロシアに焦点を当ててきたが、より広く捉える必要がある。
北朝鮮の高度な核・ミサイル能力や戦術兵器の開発、ロシアとの新たな軍事同盟、そして韓国を恒久的な「敵対国家」と指定したことは、この文脈の中で無視できない。パキスタンによる戦術核兵器の増強と先制不使用政策の拒否も、また、最近再確認されたにもかかわらず、過去10年間にわたりインド自身の先制不使用姿勢に導入された曖昧さも、いずれも無視することはできない。核兵器管理協定が事実上消滅し、代替案の見通しも立たない状況下で、核兵器備蓄が全体的に増加していることが、こうした現実を一層深刻化させている。
今日の核先制使用に関する懸念は、地域紛争の危機をきっかけとした激化や敵対者の意図に対する誤認や誤算、そしてデジタル技術が関与する指揮統制の失敗の可能性を浮き彫りにする傾向がある。
ロシアが核兵器の使用に向けて半歩踏み出したことは、戦場の兵器としてであれ、原子力発電所を巨大な「汚い」爆弾に変える形であれ、関連しながらも異なる可能性を示している。規範の変化だけでなく、核兵器を管理する心理の変化は結果に対する想像力を減退させ、考えられないことを考え得るものにすることから、今後数十年にわたる中核的なリスクとなるだろう。


