バイブコーディングとは何か
IBMは自社ウェブサイトでバイブコーディングを「手作業でコードを書くのではなく、AIツールにプロンプトを与えてコードを生成させる実践を指す、ソフトウェア開発における新しい(かつ厳密には未定義の)用語」と定義している。IBMはさらに、「ソフトウェア工学では、開発が厳格な手動コーディングから、より柔軟でAI駆動のものへと再構成されつつあり、その最前線にあるのがバイブコーディングである」と説明する。言い換えれば、コードを1行ずつ書く代わりに、アプリケーションの内容、実現したい機能、ビジョンなどをプロンプトとして入力すれば、LLM(大規模言語モデル)が動作するコードを生成してくれるということだ。
開発初期における参入障壁を大きく下げる
想像できるとおり、これは初期段階のアプリケーション開発における参入障壁を大きく下げる。
この「バイブコーディング」という用語は、OpenAI、テスラ、グーグル・ディープマインドでの勤務経験を持つ計算機科学者のアンドレイ・カルパシーが2025年2月に作った造語だ。
バイブコーディングの長所
バイブコーディングの利点は次のとおりだ。
・経験豊富な開発者でなくてもアプリケーションを作れる
・起業家や創業者は、プロダクト責任者や開発者を(当初は)雇わずとも、機能するアプリを作れる
・MVP(実用最小限の製品)の開発が容易(かつコスト効率的)になる
・General Assemblyの調査によれば、プロダクトマネージャーは「エンジニアリングに依存せずに製品コンセプトのプロトタイピングと検証ができる」点を評価している。ただし前述のとおり、「現在そうしていると答えたのは38%にすぎない」と指摘している。
バイブコーディングの短所
だが、バイブコーディングには欠点もある。これは迅速な解決策だが、多くの迅速な解決策と同様にトレードオフがある。したがって、いつどのようにバイブコーディングを用いるかをよく考え、期待値を調整して無駄な時間を過ごさないようにすることが重要である。主な短所は次のとおりだ。
・デバッグに膨大な時間を費やす可能性
・セキュリティ上の脆弱性の懸念
・スケーラビリティの欠如や低パフォーマンスの問題
・コードの背後にある理屈を理解できない可能性
バイブコーディングはプロトタイピングや実験に最適、人間側のAIスキルが不可欠
以上のように、バイブコーディングが適しているのは、初期のMVP、プロトタイピング/モックアップ、実験に限られる。
バイブコーディングは開発プロセスを加速するものの、実際のエンジニアの知識・直感は依然として不可欠なAIスキルといえる。テストや各ステップの背後にある「なぜ」を理解する必要がある。
2026年に向けてバイブコーディングを学ぶための5つの認定資格
以下は、2026年に向けてバイブコーディングを学べる認定やコースの例である。
・Vibe コーディングの概要(Microsoft Learn Free Training)
・Vibe Coding Essentials - Build Apps with AI Specialization(Coursera)
・Vibe Coding 101 with Replit(DeepLearning.ai)
・Intro to Vibe Coding(Codecademy)
・Vibe Coding Fundamentals(コロラド大学、Coursera)
私たちはなお、AIがもたらす莫大な可能性を理解している途上にある。バイブコーディングはその1つであり、AIエージェントは今年のもう1つの画期的なブレークスルーだ。2026年には、AIスキル、ユースケース、職場でのイノベーションに次に何が現れるのか、誰にもわからない。
当面は、キャリア、給与の伸び、事業・市場拡大のためにも、AIの最新動向(とりわけ自分の業界や職務に関わるもの)に親しみ、スキルや知識にギャップがある分野をアップスキルするのが得策である。そこにはいま、バイブコーディングも含まれる。
最後に、グリックの言葉を引用しよう。
「長い間、生成AIは過大評価なのではと疑ってきた。だが実際は過小評価されていると学びつつある」。


