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2025.11.10 13:00

中国で最も裕福な叩き上げ女性、バイオテックブームの中で約3兆円の資産を築く

ジョン・フイジュアン(鍾慧娟。Zhong Huijuan)。Zhang Wei/China News Service/Visual China Group via Getty Images

ジョン・フイジュアン(鍾慧娟。Zhong Huijuan)。Zhang Wei/China News Service/Visual China Group via Getty Images

中国で革新的新薬のパイプラインが拡大しており、同国のバイオテック分野への投資家の関心をかき立てている。この楽観的な流れの中で、江蘇恒瑞医薬(Hansoh Pharmaceutical Group、以下「ハンソー」と呼ぶ)の会長兼CEOの64歳のジョン・フイジュアン(鍾慧娟。Zhong Huijuan)は、フォーブスの「中国の富豪100人」2025年版で順位を6つ上げて16位となった。香港上場の同社株が前回の資産評価時から70%上昇したことにより、彼女の純資産は約3分の2増加して197億ドル(約3兆円。1ドル=153円換算)に達した。

中国一の自力で裕福になった女性で、元は化学教師であったジョンは、同社の新薬候補に対する強気の見方と、それらの開発で世界的製薬大手と結んだ高収益が見込める取引から恩恵を受けている。

10月、ハンソーはスイスの多国籍企業ロシュと、大腸がん治療薬を共同開発する15億ドル(約2295億円)のライセンス契約を締結した。ドイツ銀行香港拠点のアジア・ヘルスケア株式リサーチアナリストであるサイラス・ンによれば、この契約によりハンソーは2026年初頭にも8000万ドル(約122億円)の前払い金を受け取る権利を得る見込みだという。契約には、約14億5000万ドル(約2219億円)のマイルストーン支払いの可能性に加え、将来の売上に対するロイヤルティも含まれる。

これは、ハンソーが2020年以降に締結した6件のライセンス契約のうちの1件であり、そのうち5件はGSK、メルク、リジェネロンといった大手製薬企業と、肥満およびがんの治療薬を共同開発するためのものだった。Macquarie Capitalのアジア・ヘルスケア・リサーチ責任者で香港拠点のトニー・レンは、特に腫瘍学、免疫学、代謝疾患といった治療領域で、同様の取引をさらに獲得できる可能性があると述べる。

長年、模倣薬の量産で知られてきた中国は、同分野への政府支援の高まりを背景に、バイオテック大国へと変貌しつつある。昨年のブレークスルーの1つとして、香港上場のAkeso(アケソ)が開発したがん治療薬が、臨床試験でメルクの大型薬キイトルーダ(Keytruda)を上回った。モルガン・スタンレーは9月のリサーチレポートで「中国のバイオテックの台頭は急速であり、人材、患者アクセス、コスト効率の高いインフラによって推進されている」と指摘した。モルガン・スタンレーは、2030年までに中国発の医薬品が世界で年間340億ドル(約5.2兆円)の売上に達し、2040年にはそれが6倍超の2200億ドル(約33.7兆円)まで拡大する可能性があると見積もっている。

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翻訳=酒匂寛

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