経済・社会

2025.11.09 12:00

NY新市長マムダニとの闘いと苦悩──地元スーパーマーケットで財をなした大富豪

ジョン・キャツィマティディス(Photo by Spencer Platt/Getty Images)

地元の老舗チェーンを束ねる「レッド・アップル・グループ」、売上高は約1.2兆円

生後6カ月でギリシャからニューヨークに移住して以来、彼はほぼ生涯を同市で過ごしてきた。1971年、最初のレッド・アップル食料品店を開くため、ニューヨーク大学を最終学年で中退した。4年以内に彼は10店舗を持ち、年収は100万ドル(約1億5300万円)に達した。今日、1986年にグリステディズのスーパーマーケットを買収し、最近ではダゴスティーノへの支配持分を取得したレッド・アップル・グループは、ニューヨーク市最大のスーパーマーケットチェーンだと述べており、その多くがマンハッタンにある。

advertisement

卸値提供で物価高に対抗する、家賃・税免除の市営店構想

家計を圧迫する食料品価格の高騰に対応するため、マムダニは市が後援する店舗を設置する計画を掲げている――これらは家賃も税金も免除され、農家や中小企業と提携して卸売価格で食料品を提供し、利益を上げる計画は持たないというものだ。マムダニは米国時間11月4日夜の勝利演説でこう述べた。「あなたが――食料品の値段が下がるのをまだ待っているシングルマザーであれ、背水の陣に立たされている他の誰であれ――あなたの苦しみは、私たちの苦しみでもあります」。

「2年」は店舗が赤字、万引き増で販売機会が細る

キャツィマティディスは、それは自分の苦しみでもあると抗議する。「私たちには利益率がありません」と彼は述べ、少なくとも「2年」は店舗が赤字であると説明した。彼は市の状況も非難する。「万引きは史上最高レベルにまで増えています。多くの商品が(盗難防止対策で)鍵をかけられており、人々が買い物をするのが容易ではなくなっています。その結果、売上が落ちています」。

数千人を雇用するキャツィマティディスは、市営店舗が価格で自社を下回る場合にどう対応するかはまだ決めていないが、人員削減が「確実に」必要になるだろうと述べる。「商業用家賃税も売上税も払わない免税のスーパーマーケットを想像してみてください……つまり、どうやってそれと競争できますか」と彼は言う。「市当局には逆らえない」。

advertisement

税負担の重さが経営を圧迫、食料品高騰に市民の不満が拡大

キャツィマティディスは2013年の共和党予備選で市長選に出馬したが、候補指名をジョー・ロータに譲り、ロータは本選で民主党のビル・デブラシオに敗れた。「今の状況では、私たちは税金に対してさらに税金を払っています。もう手に負えません」と彼は言う。「食料品の値段が高すぎると人々が怒鳴り叫ぶのも無理はありません」。

生活の質の維持、NYPD削減の回避を願う

移転をほのめかす一方で、キャツィマティディスは今もビッグ・アップルに愛着を見せる。「私は、彼(マムダニ)が市の生活の質を維持し、ニューヨーク市警(NYPD)を削減しないことを願っています」。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事