数十年にわたる調査で、離婚を切り出すのは男性よりも女性の方が圧倒的に多いことが示されている。この理由を誰かに尋ねると、おそらく次のどちらかが返ってくるだろう。「男性の方が女性よりも離婚する理由がはるかに少ないから」、あるいは「女性の方が離婚したい理由をはるかに多く抱えているから」。だが専門誌『Current Opinion in Psychology(カレント・オピニオン・イン・サイコロジー)』に2022年に掲載されたレビューによると、事はそう単純ではない。
研究の著者らは進化論的見地から、男性と結婚している女性が離婚を切り出しがちなのは、進化的に重視するように形成された好みと相容れない形で現代の結婚が構成されているからだと指摘している。言い換えると、現代の結婚の多くは設計上、女性をほとんど満足させないような形で機能している。
女性がパートナーに恋愛感情や性的魅力を感じないようになるのは、おそらく先祖の嗜好にまで遡ることができる、というのが研究者らの最も重要な主張だ。進化の過程で、女性はかなり特異な特徴を持つ男性に惹かれてきた。その特徴とはリソースを提供できる、望ましい遺伝的特徴を持つ、信頼できる扶養者である、というものだ。
だが男性がこれら3つの要素に欠けているように見える、驚くほど単純な行動がある。それは、家事の手伝いをしない、ということだ。
パートナーが子どものように感じ始めたら
前述のレビューでは、専門誌『Archives of Sexual Behavior(アーカイブズ・オブ・セクシュアル・ビヘイビア)』に2022年に掲載された一目置かれている研究に言及している。研究ではジェンダー不平等と「男性はこうすべき、女性はこうあるべき」といった規範に基づく性役割が既婚女性の性欲に及ぼす影響を調べた。男性と結婚して子どももいる1073人の女性を対象に2回のオンライン調査を行った。
結婚における性に紐づけられた役割、つまり男性が大黒柱で、女性は世話係とみなされる「伝統的」な性役割を効果的に調査するため、研究チームは子どもをもたない女性や未婚女性、同性婚の女性を調査対象に含めなかった。
調査結果が示すように、対象の女性たちの性欲低下を最も強く予測する要素の1つは不均衡だった。具体的には、家事の大部分を女性が担っている場合、夫に対する性欲は著しく低かった。
多くの人がまず思い浮かべるかもしれないことに反して、これは女性が忙しすぎたり、疲れきってセックスどころではないというものではなさそうだ。研究結果によると、女性が家事の大部分を担っている場合(残念ながら、現代の多くの結婚ではまだそうだ)、夫を対等な存在として見ていないことが原因である可能性が高い。夫を、自分に依存している人として見ているのだ。
重要なのは、このような自分に依存しているという認識は、純粋な必要性からくるものではないということだ。そうではなく、自分で完璧にこなせるはずの基本的な雑事を、夫が妻に依存していることに起因していると研究の著者らは指摘している。雑事には洗濯や料理、掃除、買わなければならない食料品を覚えておくことなどが含まれる。
特筆すべきは、これらの家事は大多数の核家族において、育児と重なるということだ。
まさにこれが、結婚生活が不平等から幼児化へと転じる可能性がある転換点だ。前述した家事は一般的に、養育者が子どものために行うものだ。私たちは相手から同様の行為が返ってくることを期待していない家事を、育児とみなしがちだ。



