宇宙

2025.11.08 13:00

ベゾスの大型ロケット「ニューグレン」 NASA探査機打ち上げで新たな火星航路を開拓へ

米宇宙企業ブルーオリジンの大型ロケット「ニューグレン」の初打ち上げ。2025年1月16日、フロリダ州ケープカナベラル宇宙基地にて(Paul Hennessy/Anadolu via Getty Images)

米宇宙企業ブルーオリジンの大型ロケット「ニューグレン」の初打ち上げ。2025年1月16日、フロリダ州ケープカナベラル宇宙基地にて(Paul Hennessy/Anadolu via Getty Images)

米航空宇宙局(NASA)は、人類が火星に到達する方法を再定義する可能性を秘めた新たなミッション「ESCAPADE:Escape and Plasma Acceleration and Dynamics Explorers」の探査機を間もなく打ち上げる。打ち上げに使用するのは、米アマゾン創業者ジェフ・ベゾス率いる宇宙企業ブルーオリジンの大型ロケット「ニューグレン(New Glenn)」だ。今年1月に初飛行を行ったばかりのロケットで、今回が2回目の打ち上げとなる。

ESCAPADEは火星の磁気環境の分析を目的としたミッションだが、同時に、人類の火星移住を計画する際にカギを握るかもしれない先駆的な新航路の試験も兼ねている。

打ち上げ予定日は日本時間10日早朝

ESCAPADEの探査機は、早ければ米東部時間11月9日(日)午後2時45分(日本時間10日午前4時45分)に米フロリダ州のケープカナベラル宇宙基地から打ち上げられる。

このミッションでは、双子の探査衛星「Blue(ブルー)」と「Gold(ゴールド)」を展開する。2基の衛星はカリフォルニア州に拠点を置く宇宙企業Rocket Lab(ロケットラボ)が製造したもので、火星の磁気環境を3次元的に解析できるよう設計されている。

火星周回軌道に投入されるESCAPADEミッションの双子の探査衛星の想像図。2基の衛星は48時間差で火星に到着する予定だ(James Rattray/Rocket Lab USA)
火星周回軌道に投入されるESCAPADEミッションの双子の探査衛星の想像図。2基の衛星は48時間差で火星に到着する予定だ(James Rattray/Rocket Lab USA)

ESCAPADEはカリフォルニア大学バークレー校が中心となって進めているプロジェクトで、NASAでは初となる他惑星へ向けた衛星2基同時打ち上げミッションだ。しかし、真に画期的な点は、火星への到達方法にある。

赤い惑星への新たな道

従来の火星探査ミッションでは、火星まで探査機を最も効率よく到達させるため「ホーマン遷移軌道」と呼ばれる楕円軌道を利用してきた。だが、この軌道を利用できるのは、火星が地球から見て太陽と正反対の位置にくる「衝(しょう)」の頃、すなわち火星と地球が最も接近するわずか数週間以内に限られる。そのタイミング(会合周期)は約2年2カ月ごとにしか訪れない。次に衝が起こるのは、2027年2月19日だ。

火星と地球の接近:2022~35年(国立天文台)
火星と地球の接近:2022~35年(国立天文台)

ESCAPADEでは、根本的に異なるルートを取る。まず、太陽と地球の重力が均衡するラグランジュ点へ向かい、そこでインゲン豆のような緩やかな楕円軌道を約1年間周回する。その後、2026年末に地球の重力を利用した加速(スイングバイ)を行って火星へ向かう。火星には2027年に到着を予定している。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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