米国の企業や政府機関による今年の人員削減数が100万人を超えたことが、6日に発表された民間のリポートで明らかになった。AI(人工知能)の導入や個人消費の軟化、採用の凍結などを背景に、米国の労働市場は過去数十年で最悪の部類に入る雇用喪失に見舞われている。
「破壊的なテクノロジー」が一変させる労働市場
米キャリアサービス会社チャレンジャー・グレイ&クリスマスのリポートによると、米国の民間部門と公的部門の雇用主は10月に計15万3074人の人員削減を発表した。削減数は前月比で183%、前年同月比では175%増えた。
年初来の人員削減数は109万9500人に達している。2024年1〜10月の66万4839件から65%増えており、2024年通年の削減数をすでに44%上回っている。
最も多くの人員を削減している部門は引き続き政府で、削減数は年初からの10カ月で30万人超にのぼる。以下、テクノロジー、倉庫業、小売業、サービス業が続いている。
米国で年間の人員削減数が100万を超えたのは、過去32年でほかに4回しかない。ドットコム・バブルが崩壊した2001年、「グレートリセッション(大不況)」のさなかの2008年と2009年、そして新型コロナウイルス禍に見舞われた2020年だ。
ホリデーシーズン前の「残酷な」解雇が相次ぐ異例の事態
チャレンジャー・グレイ&クリスマスの最高収益責任者(CRO)で労働分野の専門家であるアンドルー・チャレンジャーは、10月に発表された人員削減の要因としてAIの導入、連邦予算の削減、個人支出と企業支出の減少、コストの上昇を挙げている。
先月の人員削減数は、携帯電話の普及を受けて通信業界で大規模なレイオフが発表された2003年以来、10月としては最多だった。
チャレンジャーは「2003年と同じように破壊的(ディスラプティブ)なテクノロジーが状況を一変させつつある」と指摘している。
チャレンジャーによると、第4四半期(10〜12月)にレイオフを発表するのは近年控えられる傾向にあったため、10月にこれほど多くの人員削減があったのは驚きだという。ソーシャルメディアの登場によって、ホリデーシーズン前のレイオフという「ことさら残酷」(チャレンジャー)な仕打ちをした企業には風当たりが強くなっているが、今年はそれに逆行する動きになった。



