これを個人の資産に当てはめると、債券を安全資産、株式については「収益を期待する資産」と位置付けることができます。まずは、当面使う予定のない資金の半分を、株式や投資信託などに分散投資してみるとよいでしょう。
株式や債券など、値動きが異なる複数の資産に投資を振り分けることで、価格変動のリスクを軽減できます。また、地域と時間の分散も考慮したいところ。国内だけでなく、複数の国や地域の資産に分散して投資をすることで、対象となる国や地域で発生する政情不安や金融危機などによって価格が大きく変動する「カントリーリスク」を抑えられます。
さらに、一度で買切るのではなく数回に分けて購入することで、資産価格が高い水準にあるときに全額を投資してしまう「高値掴み」を避けることができ、平均購入単価を抑える効果が期待できます。
どの金融商品から手をつけてよいかわからない場合には、市場全体の動きを示す指数(インデックス)と同じ値動きを目指して運用される「インデックス型の投資信託」を活用し、国内、海外に半分ずつ分けることから始めてもよいかもしれません。海外資産は、為替変動の影響を受けることを認識する必要があります。投資信託では、不動産や金など、インフレで価値が目減りしにくい実物資産への分散投資も可能ですので、検討してみてもよいでしょう。
まだ間に合う。実は「50代から」が勝負どころ
2023年、当時の岸田政権が提唱した「資産運用立国実現プラン」の冒頭で、「我が国の家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、さらなる投資や消費につなげ、『成長と分配の好循環』を実現していくことが重要である」としています。
これを端的に言うと「これから日本の企業価値が向上し、株価上昇や配当増加が期待できるので、個人のみなさんもその恩恵を受けてください」ということになります。
ここまで政府が踏み込むのは、異例とも思えます。しかし、日本が約30年ぶりにインフレ時代に入ろうとするなか、個人の資産形成について考え方を大きく変える必要があることを、国民に呼びかけなくてはならなかったということです。
よく「もう若くはないのですが、資産形成に間に合いますか?」という質問をいただきます。答えはYESです。40代はもちろん50代でも遅すぎるということはありません。特に、収入のピークを迎え、お子さんのいる家庭では家計における最大の出費のひとつ、お子さんの学費の支払いが落ち着いてくる50代以降が、重要な資産形成のタイミングになります。まずは始めてみることが重要です。


