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2025.11.10 12:00

5年間で36.7兆円、巨額の資金注入に沸く「アジアのデータセンター」市場

Getty Images

世界のテック大手、今後5年間で約36.7兆円を投じデータセンター網を拡大

アマゾン、グーグル、マイクロソフトといった世界のテック大手が、今後5年間でアジア太平洋地域に約2400億ドル(約36.7兆円)を投じデータセンター網を拡大しようとしている。Cushman & Wakefieldによれば、この巨額投資と地域企業による拡張計画を合わせると、アジア太平洋のデータセンター容量は、2030年には29GWを超え2024年の12GWの2倍以上に膨らむ見通しだ。また、2030年末までには、この地域がアメリカ大陸(32GW)に次ぐ世界第2位のデータセンター市場に躍り出る可能性があるという。

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インドの富豪、巨額投資でAIデータセンター建設

この成長ポテンシャルに引き寄せられ、アジアの有力財閥や富豪も次々と参入している。インドでは、ゴータム・アダニ率いるアダニ・エンタープライゼズが、アルファベット傘下グーグルと組み、南東部アンドラ・プラデシュ州に国内最大規模となるデータセンターキャンパスを建設中で、投資総額は今後5年間で150億ドル(約2.3兆円)にのぼる予定という。

インドで最も裕福な富豪ムケシュ・アンバニが率いるリライアンス・インダストリーズも、グジャラート州に1GW規模のAIデータセンターの建設計画を進めており、グーグルやメタと共同でAIプラットフォームを開発中だ。アンバニは8月の株主総会で「全事業をAIネイティブ化し、ハイパーグロースを実現する」と語った。

韓国、OpenAIやAWSとの大型提携が相次ぐ

こうした大型提携はアジア各地で相次いでいる。韓国では今年初め、半導体ビリオネアのチェ・テウォン率いるSKグループが、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と組んでソウル南方のウルサンに50億ドル(約7650億円)を投じ、データセンターを建設する計画を発表した。

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また、カカオ創業者のキム・ボムスはOpenAIと提携し、ソウル北東部に4億3800万ドル(約670億円)のデータセンターを建設中だ。サムスン電子を率いる李在鎔も、OpenAI向けのメモリチップ開発と並行して、国内でのデータセンター共同建設を進めている。台湾では、郭台銘のフォックスコンとエヌビディアが14億ドル(約2142億円)を投じ、100メガワット規模のAIデータセンターを建設している。

タイの財閥、国家戦略のもとデジタル化を加速

タイでも、デジタル化を国家戦略として推進する流れの中で、富豪が相次いで動きを加速させている。2023年には、小売財閥のチラティワット一族が支配するショッピングモール大手セントラル・パタナが、米投資会社ウォーバーグ・ピンカスの支援を受けるエボリューション・データセンターズと提携した。翌年には、エネルギー分野の富豪サラット・ラタナワディ率いるバンコク上場企業ガルフ・デベロップメントが、グーグルと組んでAI対応のクラウド施設を建設する計画を発表した。

さらに今年6月には、ハラルド・リンク率いるB.グリム・パワーが、ニューヨークの投資会社ストーンピーク・パートナーズの支援を受けるシンガポール拠点の「デジタル・エッジ」と提携し、タイ全土でAIデータセンターを建設するために10億ドル(約1530億円)を投資すると発表した。その第1弾は、急成長中の東部経済回廊に100メガワット規模のデータセンターを建設する計画だ。

インドネシアでは、関連企業の株価が急騰

こうした投資ラッシュを受け、東南アジア各国のデータセンター関連銘柄は急騰している。インドネシアでは8月、データセンター運営会社「DCIインドネシア」の時価総額が370億ドル(約5.7兆円)を突破し、同国で2番目に価値の高い上場企業となった。同社は2021年の新規株式公開(IPO)で、共同創業者のオットー・トト・スギリ、マリーナ・ブディマン、ハン・アーミング・ハナフィアの3人をいずれもビリオネアに押し上げていた。

スギリによれば、同社はインドネシアの富豪アントニ・サリムも株主に名を連ねる中、顧客からの需要増に応えるため、さらなる拡張を進めているという。現在、ジャカルタ首都圏に合計119メガワットの稼働容量を持つDCIは、これを10倍以上の1.9ギガワットに拡大する計画だ。その一環として、シンガポールからフェリーで約1時間のビンタン島に新たなハイパースケール・データセンターを建設する。

DCIの成功は、ほかのインドネシアの富豪を市場に引き込んでいる。フランキー・ウィジャヤ率いる不動産からパーム油までを手がける複合企業シナル・マス・グループは、マレーシアのK2ストラテジックと提携し、ジャカルタ首都圏のAWSやマイクロソフトの施設にも近い土地でデータセンターを開発中だ。鉱業ビリオネアのセオドア・ラフマット率いるトリプトラ・グループも、シンガポール政府系のSTテレメディア・グローバル・データセンターズと組んで首都近郊に初のデータセンターを開設し、国内各地に複数拠点を展開する計画を立てている。

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翻訳=上田裕資

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