政治

2025.11.08 16:00

富裕層に追加課税、新NY市長マムダニが導入目指す「ミリオネア税」は実現するか?

ゾーラン・マムダニ(Photo by Michael M. Santiago/Getty Images)

ゾーラン・マムダニ(Photo by Michael M. Santiago/Getty Images)

ゾーラン・マムダニが掲げる政策は、幼児教育の無償化・市営バスの無料化・家賃の値上げ凍結などだ。また法人税を引き上げ、年収100万ドル(約1億5000万円。1ドル=153円換算)を超える“超過部分”に2%を上乗せする付加税でその財源をまかなうとも公約。これにより、ニューヨーク市民の支持を勝ち取った。では、マムダニ次期市長が導入を目指すこの「ミリオネア税」は、実際のところニューヨーク市にどんな結果をもたらすのか。

advertisement

また、年間40億ドル(約6120億円)の税収見込みとされる一方で、この問題の最終決定権はニューヨーク市にはない。所得税率を決めるのはニューヨーク州であり、州議会を通過した法案に民主党のキャシー・ホークル州知事が署名しなければ成立しない。「ミリオネア税」の実現には、高いハードルが待ち受けている。

ビリオネアのアックマン、マムダニ当選後は協力示唆も富裕層の流出を警鐘

民主社会主義者を自称するマムダニが6月の民主党予備選で勝利した際、あるビリオネアが「富裕層は逃げ出すだろう」と警鐘を鳴らした。ヘッジファンド「パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメント」を率いるビル・アックマンだ。「マムダニの下で、ニューヨークはより危険で、経済的に成り立たない街になる」。彼は6月25日、Xにそう投稿した。

当時33歳(現在34歳)の州議会議員だったマムダニは、生活コストの改善を中心とする進歩的な政策を掲げ、予備選で44%の票を獲得していた。

advertisement

だが、マムダニが11月4日の本選で50%超の得票を獲得し、ビリオネア支持者をずらりとそろえたアンドリュー・クオモ前ニューヨーク州知事に約9ポイント差で勝利すると、アックマンはXで「おめでとう。これから大きな責任を負うことになる。もしニューヨークのために私ができることがあれば、遠慮なく言ってほしい」と投稿した。

彼はまた翌5日にはさらに、「マムダニは明確な勝利を収めた。これから4年間、彼が我々の市長になる」と投稿し、「私はマムダニを支持していたわけではないし、彼の政策に思わぬ悪影響が出ることを懸念している。しかし、市長が誰であろうと、ニューヨークのためにできることはすべてやるつもりだ」と付け加えた。

この発言は、選挙期間中とはまったく異なるトーンであり、同様の態度を示したニューヨーク在住の多くのビリオネアたちとも重なる。彼らの反応は、「マムダニが勝てば富裕層が一斉に逃げ出す」という噂を打ち消す結果となった。

ところがその翌日、気まぐれなアックマンは再び態度を一変させ、「富裕層は逃げ出すだろう」と予測する投稿に「正しい見立てだ」とコメントしてリポストした。その投稿にはこう書かれていた──「この政策に賛成票を投じた人々は、いずれ痛みを感じることになる。ただし、その原因を政策や政治家にではなく、街から出て行った富裕層に求めるだろう」。

次ページ > 財源規模は約6120億円、幼児教育の無償化・市バス無料化・住宅費の引き下げなどに充当

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事