財源規模は約6120億円、幼児教育の無償化・市バス無料化・住宅費の引き下げなどに充当
マムダニの政策を実現するためには相応の財源が必要になる。彼は、中間層に負担をかけずに歳入を増やすために、法人税の引き上げに加え、年収100万ドル(約1億5000万円)を超える「ニューヨーク市民の上位1%」に対して2%の追加課税を導入しようとしている。マムダニ陣営の試算によれば、この「ミリオネア税」によって見込まれる年間40億ドル(約6120億円)の税収は、幼児教育の無償化や市営バスの無料化、住宅費の引き下げなどの施策に充てられるという。
マムダニによると、この課税が影響するのは約3万4000世帯にとどまる。「市民全体から見ればごくわずかな層だが、この1%がニューヨーク市民の所得全体の35%を占めている」と、彼は選挙サイトで述べている。
マムダニは、同じ1%が2017年にドナルド・トランプ大統領が成立させた減税法「タックス・カッツ・アンド・ジョブズ法(TCJA)の恩恵を受けたと指摘する。この法律で最高税率は39.6%から37%に引き下げられた。また、その後も今年7月4日にトランプが署名した「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」で低税率が維持された。
「ミリオネア税」の詳細、年収約1億5000万円超の所得に2%課税
マムダニが提案する付加税──年収100万ドル(約1億5000万円)超の部分にのみ適用される2%の上乗せ税率──は、ニューヨークの税制をより累進的なものにする狙いがあるという。
マムダニが指摘するように、連邦所得税は「累進課税」で、所得が増えるにつれて税率が上がる仕組みだ。たとえば、最初の区分では10%を支払い、次の区分に入った分の所得には15%がかかるというように段階的に税率が上がっていく。
ニューヨーク州もこれに似た仕組みを採用しており、2024年の税率は4%から10.9%の範囲に設定されている。
マムダニ、ニューヨーク市の所得税は「一律税率」と指摘
しかしマムダニによれば、ニューヨーク市の所得税は実質的に「一律税率(フラットタックス)」に近いという。「年収5万ドル(約765万円)でも500万ドル(約7億7000万円)でも、ほとんど同じ税率になっている」と彼は自身のウェブサイトで述べている。そして、それはおおむね事実だ。市の所得税は3.078%から始まり、最高でも3.876%にとどまるわずかな上昇幅だ。比較的早い段階で最高税率に達する仕組みで、課税所得が5万ドル(約765万円)を超えるとほぼ横ばいになる。ただし、それでも厳密には完全なフラットタックスではない(ちなみに、ニューヨーク市の所得税は1966年に導入された当初は一律2%だった)。
マムダニの構想は、年収100万ドル(約1億5000万円)を超える所得にのみ2%の課税を上乗せするもので、市の税制をより累進的なものにしようという狙いだ。
マサチューセッツ州は追加課税を導入、3四半期で約2754億円の税収実績
マムダニは、この構想は十分に機能すると主張しており、その根拠としてマサチューセッツ州の事例を挙げている。2022年11月、同州の有権者は「フェアシェア修正案」を可決し、個人所得100万ドル(約1億5000万円)超の部分に4%の追加課税を導入した。この新税は導入後のわずか3四半期で18億ドル(約2754億円)を徴収し、その歳入は学校給食や交通、教育関連の施策に充てられている。
この制度の導入当初には、「超富裕層が州から流出するのでは」との懸念もあった。実際、法案が可決された2021年にマサチューセッツ州を離れた住民はいたが、その多くはミリオネアではなくアッパーミドル層だった。この傾向は過去の統計とも一致している。マサチューセッツ州では2009年以降、すべての所得層で人口流出が続いており、とりわけ中高所得層でそれが顕著だ。背景の一因とされるのが住宅費の高騰で、他州の低価格な住宅とリモートワークの普及が、中間層の移住を後押ししたとみられている。
ミリオネアは2022年から2024年にかけて38.6%増加
では、ミリオネアたちはどう動いたのか? 米国歳入庁(IRS)の「所得統計プログラム」に基づく分析によれば、マサチューセッツ州で100万ドル(約1億5000万円)以上の課税所得を報告した納税申告書の数は、2018年から2022年の間に36%増加していた(2023年分の統計は未公表)。調査会社ウェルス・エックスのデータでも、州内のミリオネアの人数は2022年から2024年にかけて38.6%増加し、総資産額は1.6兆ドル(約244.8兆円)から2.2兆ドル(約336.6兆円)へと拡大している。


