AI

2025.11.10 11:00

OpenAI取締役会会長とグーグルに18年間在籍のベテランが創業、顧客対応「AIエージェント」新興

T. Schneider / Shutterstock.com

投資家が高く評価、創業者2人は「ビリオネア」の仲間入り

セコイア・キャピタル、ベンチマーク、スライブ・キャピタルといった名だたる投資家たちも、この構想に魅力を感じている。Sierraは9月、3億5000万ドル(約535億5000万円)を調達し、評価額は100億ドル(約1.5兆円)に達した。今回の調達を主導したグリーノークス・キャピタルの創業者ニール・メータはフォーブスに対し、「彼らの強みは潜在能力の大きさだ。米国の大企業が抱える複雑な課題を、これほど高度に解決できる企業は他に存在しない」と語った。

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この資金流入は、テイラーとバヴォーにとっても大きな節目となった。フォーブスの推計によれば、2人はいずれもSierra株のおよそ4分の1を保有しており、今回の調達によって正式に「ビリオネア」の仲間入りを果たした。

しかし、ここで話をアルプホルンに戻すと、この楽器は単なるギミックではなく、Sierraが、すでに競争が激化している市場の中でどう差別化を図ろうとしているかを象徴するものでもある。同社の競合には、評価額15億ドル(約2295億円)の注目スタートアップDecagon(デカゴン)などの投資家の熱狂を集める急成長企業のほか、ニュージャージー州に拠点を置く小規模なライバルKustomer(カスタマー)、そして数千社の顧客を抱える老舗Intercom(インターコム)などが並ぶ。

AI顧客対応市場、2030年に約7.7兆円規模へと急成長する見通し

市場が混み合うのも当然だ、とテイラーは言う。なぜなら、カスタマーサービスはAIの恩恵を即座に受けられる数少ない分野の1つだからだ。調査会社MarketsAndMarketsによれば、この分野の市場規模は2024年に120億ドル(約1.8兆円)を超え、2030年にはほぼ500億ドル(約7.7兆円)に達する見通しだ。

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メタも参入、ザッカーバーグが語るテイラーの「消費者感覚」

テイラーのかつての上司のマーク・ザッカーバーグですら、この分野に参入している。ザッカーバーグはフォーブスの取材で、「メタもAIを活用したビジネス向けツールを開発しているが、Sierraのように大企業を対象にするのではなく、中小企業に焦点を当てている」と語った。

「最近ブレット(テイラー)と話すときは、お互いが見ている市場動向を共有しながら、それぞれ異なる領域で補完し合う製品を開発している」とザッカーバーグは語る。カスタマーサービスという分野の特徴は、販売相手が大企業であっても、実際に役立つのは一般消費者であるという点だ。グーグル、フェイスブック、セールスフォースといった異なるテック大手で経験を積んできたテイラーは、その橋渡し役として理想的な人物だといえる。ザッカーバーグは彼についてこう評した。

「テイラーは、消費者の感覚や企業側の視点、そして技術的なセンス──それらすべてを兼ね備えていて、それが良いプロダクトを生み出す要素になっていると思う」。

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翻訳=上田裕資

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