北米

2025.11.10 13:00

「トランプは今“ホット”なんだ」──トランプ家の国内不動産事業、全米での拡大を目指し再始動か

(Photo by Andrew Harnik/Getty Images)

連邦議会議事堂襲撃事件が、大統領のブランドに深い汚点を残す

やがてエリックとトランプ・ジュニアは、新規事業の開拓よりも父親の既存資産の維持管理に時間を費やすようになり、本格的な再始動は大統領任期が終わるまで待つことになった。だがトランプの1期目の終盤の1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件が大統領のブランドに深い汚点を残した。「トランプの名前とイメージには、少なくとも20年から30年は消えない永続的な損害が生じた」と、事件の翌月にモーニングスターのアナリスト、ケビン・ブラウンは述べていた。その後、ツイッターとフェイスブックはトランプを追放し、銀行の一部も取引から手を引いた。

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退任後のトランプは報復に焦点を移し、自身のソーシャルメディアを立ち上げた。2022年には、UAEでトランプと取引経験のあった元幹部が、オマーンでの新たなビジネス機会をトランプ家に持ち込んだ。その後、海外での契約は次々と増え、特に2024年の大統領選が迫るにつれてその動きは加速した。とはいえ、米国内では「トランプ」というブランドはいまだに賛否が分かれており、開発業者たちはむしろその名前を建物から外す傾向を強めている。

米国内収益は年約6100万円のみ、支持者層への直接アプローチに転換

2025年の年初にトランプが再びホワイトハウスに戻った時点で、米国内で彼が収益を得ていた不動産ライセンス契約は1件しかなかった。それは、マイアミ郊外のホテルに関連する契約で、年間およそ40万ドル(約6100万円)の報酬を生んでいたが、このホテルは当初、「トランプ」の名が政治色を帯びたことで、団体予約の多くを失っていた。

「会議やコンベンションを開く企業は、わざわざ波風を立てることを避けて、ウエスティンのような無難なホテルを選ぶようになった。客の半分を怒らせたくないからだ」と語るのは、大統領とこれまでに少なくとも6棟の建物で共同事業を行ってきたギル・デザーだ。だが他の事業者が距離を置く中で、デザーはむしろトランプとの関係を深める道を選んだ。

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「私たちは方向転換した」と彼は説明する。「アメリカの半分は彼を嫌っているかもしれないが、残りの半分は彼を支持している。現在のデジタル時代では、そうした人々を特定して直接アプローチするのは簡単だ。私たちはその層に向けてキャンペーンなどを展開し、ホテルの客室を満たしている」。

リベラル寄りのナッシュビル、計画には賛否両論が巻き起こるか

ただしナッシュビルは、保守的な州の中では比較的リベラル寄りの都市であり、もしここに「トランプ」の名を冠した施設ができれば、間違いなく賛否が巻き起こるだろう。2017年にトランプ・オーガニゼーションがナッシュビルでの開発構想を打ち出した際にも、反対署名活動が起きていた。

テネシー州にはトランプ家の熱心な支持者も多いものの、今回の新プロジェクトに誰が関わっているのかは明らかになっていない。2011年の「セレブリティ・アプレンティス」で優勝し、その後もトランプ家と親しい関係を続けているカントリー歌手ジョン・リッチの広報担当者は「その件については知らない」と回答した。トランプ支持者でナッシュビルにバーを構えるキッド・ロックの代理人は、コメント要請に応じなかった。地元の不動産開発業者ポール・ボイルは、この計画について何か聞いているかと問われると「コメントできることはない」と答えた。

パートナーは強気、「トランプは今“ホット”なんだ」

一方で、もし誰かがトランプとのディールを進めようとしているなら、今は好機かもしれない。少なくともフロリダでトランプのビジネスパートナーを務めるギル・デザーはそう述べている。「彼はホワイトハウスにいる。正しい手を打ち、自分をうまく見せている。つまり、トランプは今“ホット”なんだ。ブランドとして絶好の売り時だ」と彼は語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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