中国株式市場が好調だ。AI(人工知能)ブームに加え、景気低迷や米中貿易戦争をにらんだ政府の追加刺激策への期待が追い風となっている。代表的な株価指標であるCSI300指数は、「中国の富豪100人」ランキング昨年版の作成時との比較で15%上昇し、番付記載の100人の総資産額を1兆300億ドル(約155兆円)から1兆3500億ドル(約203兆円)へと押し上げた。
今回番付入りした富豪の3分の2が、この1年間で保有資産を積み増した。5年連続で首位を守った「ミネラルウォーターの富豪」こと飲料大手・農夫山泉の創業者、鍾睒睒(ジョン・シャンシャン)会長もその一人だ。同社は2025年上半期に純利益と売上高の両方で2桁成長を報告。その結果、鍾の資産額は263億ドル(約4兆円)増えて771億ドル(約11兆6100億円)となり、金額ベースで最大の資産増を記録した。
テック大手バイトダンス共同創業者の張一鳴(チャン・イーミン)は、純資産を237億ドル増やして693億ドル(約10兆4400億円)とし、前回番付から順位を1つ上げて2位となった。ドナルド・トランプ米大統領が9月に署名した大統領令により、動画投稿アプリTikTokの米国事業がひとまず閉鎖を免れ、バイトダンスとしては一息ついた格好だ。今後は、米投資家が過半数を保有する新合弁会社が米国事業を運営することになる。
インターネット大手テンセント・ホールディングスの馬化騰(ポニー・マー)会長の資産額は628億ドル(約9兆4600億円)で、30%以上の伸びを見せたにもかかわらず、順位は3位に後退した。AI分野への投資を続けるテンセントの株価は、オンラインゲームの売上増とメッセージアプリ微信(ウィーチャット)の広告増加を受け、この1年間で40%超上昇した。
資産増加率が最も高かったのは、「ラブブ人形」の世界的ブームに業績が押し上げられた玩具大手ポップマート・インターナショナル・グループ(泡泡瑪特国際集団)の創業者、王寧(ワン・ニン)会長兼最高経営責任者(CEO)である。資産額は前年比で4倍以上増加し、222億ドル(約3兆3400億円)となった。
「中国版エヌビディア」の異名をとるAI半導体メーカー、カンブリコン・テクノロジーズ(中科寒武紀科技)の陳天石(チェン・ティエンシー)会長兼CEOは、純資産をほぼ3倍の210億ドル(約3兆1600億円)に増やした。カンブリコンは8月、2025年1~6月期の決算で、半期純利益が2020年の新規株式公開(IPO)以来初めて10億元(約210億円)を超えたと発表している。
今回番付に初登場した8人のうち最も上位に入ったのは、AIスタートアップのDeepSeek(ディープシーク)創業者の梁文峰(リャン・ウェンフェン)だ。純資産115億ドル(約1兆7300億円)で34位にランクインした。DeepSeekは今年1月にコスト効率の高いAIモデルを発表して世界の舞台に躍り出し、中国テック株の急騰を呼んだ。



