米経済は低所得層と高所得層の間で消費動向が二極化する「K字型」が進むおそれがあると、エコノミストらが警鐘を鳴らしている。ここ数カ月、米国人は物価上昇、リセッション(景気後退)の可能性、労働市場の冷え込み、現在も続く政府閉鎖に懸念を募らせている。
「上下」の分断がさらに進む米国
K字型経済は、ある部門や集団ごとに回復が二手に分かれた道筋をたどる時期を指し、エコノミストらは雇用情勢や賃金の伸び、消費動向に基づいてその時期を特定してきた。
米銀JPモルガン・チェースがこのほど発表した研究リポートによると、25〜54歳の米国人の所得の伸び(年率)は年初の約3%から9月には約2%に下がった。これは2007〜09年の金融危機に続く時期に近い水準だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長も10月末の記者会見でK字型経済に言及し、最近のレイオフ(一時解雇)や労働市場の鈍化に関連して、米経済の二極化を示す「逸話的な」データがあると述べた。企業の決算報告などで、低所得層の消費者が苦境にあるという声が聞かれると話した。
パウエルは、消費支出は増え、「多くの悲観的な予測」を覆しているとしながらも、それが「主に高所得層」によって支えられている可能性にも触れた。
カナダの投資銀行TDセキュリティーズのテーマ分析責任者であるトリスタン・マーゴは今週、同社の調査で米経済の「明確な二極化」が浮かび上がったと説明した。高所得層では支出を抑える人がさらに少なくなっているもようだが、中・低所得層では「根強い経済不安」が続いているという。
米調査会社パンテオン・マクロエコノミクスのチーフ米国エコノミスト、サミュエル・トゥームズはロイター通信に、政府閉鎖との関連で貧困世帯向けの補助的栄養支援プログラム(SNAP、通称「フードスタンプ」)の給付が停止されれば、「多くの世帯に深刻な困難をもたらす」と述べている。フードスタンプは昨年、全米で月におよそ4170万人が受給している。
米企業からも低所得層は支出に慎重になっているとの指摘
ファストフード大手マクドナルドのクリス・ケンプチンスキー最高経営責任者(CEO)は5日、アナリストらとの会見で「米国では引き続き消費者層の二極化が認められる」と語った。同社の場合、直近四半期には低所得層の顧客の来店数が2桁台の割合で減少した。対照的に、高所得層の顧客の来店数は「引き続き堅調」に推移し、2桁台に近い伸びを示した。
ケンプチンスキーは以前、米消費者のこうした分断状況を「二層経済(two-tier economy)」と表現し、同社が今年、割安なバリューメニューを拡充したのはそれに対応したものだと説明していた。



