メッセージで受信した言語を検出して、自動的に翻訳する機能もある。ユーザーに馴染みのない言語でメッセージが届いた時にも、ワンタップでそのテキストを翻訳できるように使い方のヒントも提案する。さらに、相手がまだ最新のOSにアップデートしたアップルデバイスを使っていない場合、あるいは他社のスマートフォンからSMSを送ってきた場合でも、ユーザーがタイピングしたメッセージが翻訳されて相手に送られる。
FaceTimeアプリのビデオ通話はテキストによる翻訳キャプションが付く。そして電話アプリの場合、ライブ翻訳は音声(オーディオ)とテキストの両方を同時にユーザーに提示する。
なぜFaceTimeアプリには、オーディオによるライブ翻訳を搭載しなかったのか。カマル氏が次のように説明する。
「それぞれのアプリに機能を最適化するため、私たちは細心の注意を払いました。FaceTimeビデオ通話の場合、相手の顔を見ながら笑い声を聞き、感情を共有しながら自然なコミュニケーションが交わせるように体験を溶け込ませることに腐心しました。控えめでありながら、より深いコミュニケーションをサポートするため、テキストのみのライブキャプションを選んでいます」
一方、電話アプリではiPhoneを耳に近づけながら会話をすることが多いため、音声主体(オーディオファースト)の利用形態とした。ただし、電話アプリの場合はスピーカーフォンにして、画面に表示されるライブ翻訳のテキスト書き起こし機能も併用できる。筆者は外国語による音声通話に慣れていないため、テキストといっしょに会話の内容をダブルチェックできる仕様はありがたい。
ホァン氏も「電話による音声コミュニケーションは、ボディランゲージを読んだり、相手の表情を見るような視覚的な情報を頼りにできません。そのため、私たちはテキストによる翻訳情報も、デバイスの画面に表示することを開発当初から重視してきた」と話す。
電話アプリの場合は、ユーザーが通話開始時にライブ翻訳をオンにすれば、翻訳音声が通話相手に届けられる。先方がiPhone以外のスマートフォンを使っていても、あるいは固定電話からかけていても、分け隔てなく翻訳音声が有効になる。
その際に、ユーザーが母語で話す元の声を小さい音量で再生し、翻訳された音声はより大きな音量で再生するように、音の強弱を変えて、聞こえ方に差を付けた。「私が話していることを通話相手に認識してもらいながら、元の声に気を取られることなく翻訳音声に集中してもらうための工夫」であるとホァン氏が狙いを説く。逆に、通話相手の生の声と機械音声の翻訳を聞きわけることができるため、対面したことのない相手とのコミュニケーションも円滑に運ぶ。



