人がハグをするのは、大抵は、抱きしめる相手に対する愛情からだろう。だが、同じハグでも、「ジョブハギング(job hugging:現在の職にしがみつくこと)」が米国の働き手の間でトレンドになっているのは、先が見えない経済状況を背景とした、未知の要素を恐れる気持ちからだ。
やりがいよりも安心感を得たい、との気持ちから今の仕事にしがみつき、現状維持を続けている従業員は、事業の将来を考えれば、あるべきモチベーションの姿とは言えない。だが、最新の調査によると、現在、ジョブハギングをしている人たちは、あと2年、少なくとも2027年までは現状を維持するつもりであることが判明した。
米国の働き手が今後も「ジョブハギング」を続けたい理由
筆者はこれまでもウェブ版のフォーブス向けに、ジョブハギングやジョブホッピング(転職を繰り返すこと)について記事を書いてきた。労働市場が冷え込み始めて以来、ジョブハギングは勢いを増しており、ジョブホッピングに取って代わりつつある。
もはや、ジョブホッピングをしても大幅な昇給は望めない。また、ジョブハギングをする人たちには、今のところは現状維持が「より安全な選択肢」だという考えがある。
労働市場の冷え込みにより、米国の働き手のあいだでは、職場において慎重さを是とする新たな時代が到来した。米フォーチュン誌に掲載されたある記事では、「雇用なき成長」(jobless growth:採用と解雇の両方が低調な状態)が新たな常態となったと報じている。この新しい時代においては、野心や変化よりも、安心感や賃金、安定性といった要素がより重視されている。
専門家も、「ジョブハギングの時代」が長期にわたって続くと予想する。加えて、就職・転職サイトのMonsterが先ごろ発表した2025年のジョブハギング状況に関するレポートでも、このトレンドがスローダウンする気配はないことが裏づけられている。
この調査では、回答した従業員のうち実に75%が、2027年いっぱいは現状を維持するつもりだと回答している。また、今の仕事にとどまる理由は、経済の不確実な状況や、未知の要素への恐怖心だと回答した者の割合は、半数近く(48%)に達した。



