そこからジープまたは他の自動車で1時間ほど北へ走ったミシガン州デトロイトには、ウィリス・オーバーランドの販売店舗およびサービスセンターとして使われていた4階建てのビルが今も残っている。
1912年に建てられたこのビルは、1918年にはデトロイト自動車ショーの会場にもなったが、1950年代までに何度か所有者が替わった。モーター・シティ(デトロイト)が衰退に向かうとともに、このビルは数十年の間、休眠状態となっていた。
だが、幸いにも取り壊されることなく、デトロイト再開発のために2005年に買い取られたかつてのサービスセンターは現在、高級マンションや店舗が入る「ウィリス・オーバーランド・ロフト」という建物となっている。

バンタム・ジープを振り返る
ウィリス・オーバーランド社が後にジープの主要な製造会社になったとはいえ、その原型となる車両を最初に製造したのはアメリカン・バンタム社だった。
「アメリカン・バンタムは文字通り『ジープの父』と呼ぶことができる」と、軍事車両保存協会会報『ヒストリー・イン・モーション』編集長で軍事史家のジョン・アダムス=グラフは言う。
「バンタムは、米国陸軍需品科による小型偵察汎用車両の開発要請に最初に応え、わずか49日間で試作車を完成させ、メリーランド州ホラベアードキャンプへ納入した」と、アダムス=グラフはメールで説明してくれた。「陸軍が依頼した135社の中で、バンタムの他にわずか2社、フォードとウィリス・オーバーランドも試作車を納入した。しかし、期限通りに試作車を納入できたのはバンタムだけだったので、同社が後に『ジープ』となる車両の最初の契約を獲得した」


