セコイア・キャピタルは、シリコンバレーで最も歴史ある名門ベンチャーキャピタル(VC)の1つだ。同社は11月4日、約3年間にわたってマネージングパートナーを務めたロエロフ・ボサが退任すると発表した。後任には、アルフレッド・リンとパット・グレイディの2人が就く。彼らは、フォーブスが世界のトップ投資家を選ぶ年次リスト「Midas List(ミダスリスト)」の常連でもある。
ボサは助言役へ、リンとグレイディが新体制率いる
ロエロフ・ボサは声明で、今後は「パートナーシップへの助言役」としての役職に移り、引き続き出資先企業の取締役会に参加すると述べた。後任のアルフレッド・リンは2017年からセコイアのアーリーステージの投資を共同で率いており、パット・グレイディは2015年から成長投資部門を共同で率いてきた。
運用資産約8.6兆円超を誇るVCの激動期、FTX破綻などを経て節目へ
今回の経営体制の刷新は、運用資産560億ドル(約8.6兆円。1ドル=153円換算)超を誇るシリコンバレー屈指のVCの激動の時期を締めくくる節目となる。セコイアは2021年に、投資先の上場後も株式を保有し続けることを目的とした「恒久的資本構造」を導入したが、その時期はパンデミック後の民間・上場テック企業の評価額が急落し始めたタイミングと重なった。
ボサはまた、その当時セコイアの期待の星とされていた暗号資産企業FTXの破綻にも直面した。FTXはかつて320億ドル(約4.9兆円)の評価を受けていたが、2022年11月に崩壊した。そして2023年には、セコイアの米国部門が中国およびインドの独立事業体と正式に分離した。
セコイアは本件に関するコメント要請にすぐには応じなかった。
クラーナ取締役会での対立が激化、ミラー離脱と上場評価
同社では、社内の対立が表面化する事態も相次いだ。スウェーデン発の後払い決済スタートアップ、Klarna(クラーナ)の取締役会では、ボサとかつてセコイアを率いたマイケル・モリッツの対立が激化し、取締役会が実質的な「戦場」と化した。セコイアのパートナーであるマシュー・ミラーは、フィンテック企業の会長職からモリッツを解任しようと主張したと報じられた後、取締役を辞任し、さらにセコイアを離れて自身のファンドを立ち上げている。クラーナは今年9月に上場し、時価総額が170億ドル(約2.6兆円)に達した。
最高執行責任者が辞任、パートナーのSNS投稿が混乱に拍車
混乱はその後も続いた。セコイアの最高執行責任者(COO)であるスマイヤ・バルバレは8月に辞任したが、その背景には、同社パートナーであるショーン・マグワイアがX上で、当時ニューヨーク市長選の有力候補だったゾーラン・マムダニを「イスラム主義者」と非難した投稿があったとされた。この発言を受けて、数百人のスタートアップ創業者がマグワイアへの処分を求める公開書簡に署名した。一方で、マグワイアを支持する側も別の公開書簡を発表しており、彼がイスラエルとハマスの戦争をめぐって挑発的な発言を繰り返していることも、対立に拍車をかけている。



