中国のAI企業DeepSeek(ディープシーク)は1月、既存の競合であるOpenAIのChatGPTなどに比べ、極めて低コストで開発したAIモデル「R1」を公開し、世界を揺るがした。テック株が急落するなか、このダークホース企業の創業者である40歳の梁文峰(リャン・ウェンフェン)は一気にビリオネアの仲間入りを果たした。Forbesが企業価値150億ドル(約2兆3100億円)と推定する非公開企業である同社に対する彼の持分を主因として、リャンは今回初めて「中国の富豪100人」に入り、資産は115億ドル(約1兆7700億円)に達した。
これまでのところ、DeepSeekは外部投資家から資金を調達しておらず、資金の大半はリャンが10年前に立ち上げたもう一つの事業であるクオンツヘッジファンドのHigh-Flyerによって拠出されてきた。中国と米国のアナリストやVC投資家は、DeepSeekの企業価値が、日本のソフトバンクが主導した3月の資金調達でOpenAIが達成した評価額3000億ドル(約46兆1400億円)の5%から10%に相当し得ると見積もっている。
米AI大手のOpenAIは、10月に従業員が株式を投資家コンソーシアム(Thrive CapitalやT. Rowe Priceを含む)に売却した取引で評価額5000億ドル(約76兆9000億円)に達したと広く報じられたが、DeepSeekの比較対象としては3月の資金調達に基づく評価のほうが妥当だと、金融サービス会社D.A. Davidsonのポートランド拠点の調査アナリストであるアレックス・プラットは述べる。
8月により高度な「GPT-5」モデルを投入したOpenAIとは異なり、DeepSeekは次世代モデルをまだ発表しておらず、これまでのところ現行モデルへの漸進的なアップデートのみを行っている。さらにアナリストらは、商用化の進展が遅いとも付け加える。プラットによれば、DeepSeekの推定売上は、OpenAIが昨年報告した年率120億ドル(約1兆8500億円)に比べてもかなり少ないという。(DeepSeekとHigh-Flyerはコメント要請に応じなかった)。OpenAIは、週あたり7億人超のユーザーに、より高度なChatGPTのバージョンに対して月額20〜200ドル(約3000円〜3万円)を課金している。また、チャットボットを支える基盤モデルへのアクセス料(API利用料)を支払う開発者からも収益を得ている。



