リッチリスト

2025.11.07 12:30

AIの神童、DeepSeek創業者が中国の長者番付100人に初登場

DeepSeekの創業者、梁文峰(VCG/VCG via Getty Images)

国内競争が激しい中、中国企業の多くはチャットボットを主に無料で提供してきた。中国の調査会社aicpb.comによれば、DeepSeekのアプリは9月に7300万人超のアクティブユーザーを抱えた。同社は企業向けの開発者に対してモデル利用料(API利用料)を課しているが、その料金は抑えられており、処理データ量の単位であるトークンで見て100万トークンあたり0.03ドル(約4.6円)からとなっている。OpenAIの最新のGPT-5はそのほぼ5倍、最低でも100万トークンあたり0.125ドル(約19.2円)だ。

advertisement

創業者のリャンは、自己資金で立ち上げたこの事業について、いまだ数値目標を示していないが、昨年、地元メディアの36Krに対して行った稀なインタビューで、主たる動機はイノベーションの推進だと語った。中国はあまりに長い間フォロワーに甘んじてきたと彼は語り、DeepSeekの目標は技術の限界を押し広げることだという。

小学校教員の息子であるリャンは、浙江大学でコンピュータビジョンを学んだ大学時代にAIへの関心の原点を見いだした。2010年に情報通信工学の修士号を取得して卒業後、彼はHigh-Flyerを設立し、独自のAIアルゴリズムを用いて株式を選別した。金融データ提供会社Preqinによれば、同社は約80億ドル(約1兆2300億円)の資産を運用している。

9月に学術誌『ネイチャー』の表紙を飾ったリャンとそのチームの研究論文は、DeepSeekの学習手法の詳細を示し、同社があるAIモデルの学習にわずか29万4000ドル(約4500万円)しか費やしていないことを明らかにした。これに対し、競合のOpenAIはGPT-5のある6カ月間の学習に5億ドル(約769億円)を投じたと報じられている。しかし、DeepSeekが自己申告したコストには、エヌビディア製チップの調達など、長年にわたるハードウェアへの推定16億ドル(約2462億円)の支出が含まれていない。これはフロリダ拠点の調査会社SemiAnalysisが1月に公表したレポートによるものだ。現在は米国の半導体輸出規制により、同社はモデルを支えるために中国の通信大手ファーウェイからチップを調達していると、セミアナリシスのアナリスト、AJ・クラビは述べる。

advertisement

一方、中国国内では、強力な競合が立ちはだかっている。特に中国のEC大手アリババは、今後3年間で500億ドル(約7兆7000億円)超をAIに投資し、人工超知能でのブレークスルーを目指していると、上海拠点の調査会社86Researchのアナリスト、チャーリー・チャイは述べ、開発者がアリババのQwenモデルに傾きつつあると指摘する。D.A. デイビッドソンのプラットは、これらは「DeepSeekのモデルに匹敵し、むしろ優れている可能性すらある」と述べ、世界はDeepSeekの次の一手を待ち構えていると付け加えた。

SEE
ALSO

マネー > リッチリスト

AI分野の最新ビリオネア、フォーブスの世界長者番付2025年版で注目

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事