「人間中心」のアプローチを用いる具体事例とは(前編より)。後編では、ENND Partnersがどのような経営者と「対話」を重ね、日本企業をアップデートし次の成功体験を生み出そうとしているのか、その核心に迫る。
ENNDの活動を強力に後押ししているのは、博報堂DYグループの「リレーション構築力」だという。
「博報堂DYグループは、日本の大企業の多くを顧客として抱え、長く深くかかわってきており、コンサル以上の情報力をもっています。ですから各企業のキーパーソンへスムーズにアクセスできます。顧客にも、安心を感じてもらえているようです」(小森)
博報堂DYグループのネットワークと、ENND独自のアプローチの組み合わせが、戦略と実行を架橋する力を一段と強固なものにしているのだ。ENNDとのパートナーシップに至る企業にはどんな特徴があるのか。
「新しい事業や海外展開を模索している、つまり、新たな挑戦を望んでいるというのが特徴ですね。既存市場での最適化が進み、限界に達しているので、大企業も新領域への進出を迫られているのです。
即効性のあるコスト削減などで短期的な成果を求めるより、長期的な視点での変革の必要性を理解している経営者が多いと感じています」(小森)
出発点は対話だ。
「僕らは何かメニューをもっていって、どれか買ってくださいといった商売をしているわけではありません。経営者の悩みを聞きながら、こちらも従来のコンサルのアプローチでは解けない問題としてこんなテーマがあるんじゃないですかと問いかけ、対話を重ねて具体的な変革のポイントを探っていきます。短期的な成果を望んでいる場合には、別のコンサルを紹介する場合もある。そこは我々が得意な領域ではないからです」(小森)
鷲見は、かつての日本企業はデザイン思考と呼ぶことこそなかったものの、それが意味するところのアプローチを実践していたと指摘する。
「日本の経済が世界を席巻していたころ、我々の憧れの的だった大手メーカーは、デザイン思考的な概念である人間中心主義、つくって考える(Learning by Making)、物語によってアイデアを共有するといった手法を取り入れていました。しかし今は経営組織がサイロ化したり、複雑化して、それを実践しづらくなってきた。私たちはそれをデザイン思考的なアプローチとして整理し、日本企業にフィットするかたちにアップデートして適用しているのです」(鷲見)
過去の成功体験に埋もれるのではなく、その本質を現代に再解釈し直すことが日本企業の復活の鍵である。ENNDは、人の感情や動機を丁寧に汲みとり、現場が自ら動き出す仕組みをデザインし、日本企業の次の成功体験を生み出そうとしている。
▶︎前編の記事はこちらから
ENND Partners
https://enndpartners.com/
わしみ・けんいちろう◎ENND Partnersパートナー兼マネージングディレクター。広告代理店や事業会社での経営/事業再生を経験し、コンサルティング業界に参画。デロイトデジタルの立ち上げ、ボストンコンサルティンググループを経て独立、The Yellow Sheep社を創設したのち現職に至る。
こもり・ひろひと◎ENND Partnersパートナー兼マネージングディレクター。ネット専業広告代理店勤務を経たのち、Kearney、デロイトデジタルの立ち上げを経て、ボストンコンサルティンググループへ。鷲見と共同創設したThe Yellow Sheepを経て、現職。



